「女将のこえ207」小西 綾子さん、京の宿 北海館 お花坊(京都府京都市)
2018年2月24日(土) 配信
□笑顔の花開くお花坊
取材依頼の電話口からでも花のような笑顔が見える。それが、綾子さんに出会う前からの印象だったが、実物はそれ以上。あふれる思いやりがスタッフにも伝わるのか、宿は終始一貫、温かかった。
日頃や月一の研修時、「私は必ずみんなを大事にするから、みんなはお客さんを大事にしてあげて」と、綾子さんは言うそうだ。
京都の呉服店で生まれ、両親の勧めで19歳の若さで見合い結婚した。義父の営業に同行したり、経営勉強会に参加したり、名刺を持たせてもらえない時期には、こっそり自費でつくり、しかも肩書を取締役にする知恵を働かせた。前身の「北海館」の客足が著しく減ると、万が一に備えて大型トラックの免許を取得。使うことはなかったが、突飛な考えに見えて、実は地に足が付いている。
2000年に大改修で休館した際、綾子さんはじっとしていなかった。なんと、立場を伏せて大型旅館でアルバイト。「掃除や布団敷きを改めて学びました」と屈託ない。
3カ月後、同館は「お花坊」に改名した。大正時代の貴重な建材を活かすため、床や壁を覆っていた化学シートを撤去し、毛氈で隠れていた松の一枚板の階段を復活。黒光りする階段は歴史の証人だ。
改修前は、その古さから顧客の期待を裏切るのが辛かった。
「母親を初めて旅行に招待したというお客さまに叱られ、『あなたなら分かるでしょう』と、私の手を握らはった。翌朝、申し訳なくて情けなくて、後ろ姿で泣いていると、私を見つけて、『頑張ってね。あなたなら絶対にいい旅館ができる』と言ってくれはりました。25年経っても忘れられません」
悲願の大改修で、昔心を感じられる京の宿として息を吹き返したお花坊。もともと評判のよかったおもてなしと相まって、旅行会社の賞を次々と獲得。人気旅館の仲間入りを果たした。
綾子さんは3時半起床で働く。「いつ寝ているのか」と、仲居さんも不思議がる。改修費1・7億円は16年間で完済した。
「みんなまだあったかい布団で寝てるんやろなと思うけれど、こんなに朝早くから働けるんやと思うと、私はすごいって、元気が出てきます(笑)」
今春、大手企業に勤める2人の子供が跡継ぎとして帰ってきてくれる。自分のような働き方はしてほしくないが、「お花坊の関係者みんなが、社会とつながっている実感と、ここで成長できたという実感を持てる場でありたい」との思いは継承してくれると信じている。花が微笑む、新しい春がやって来る。
(ジャーナリスト 瀬戸川 礼子)
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住所:京都府京都市下京区不明門通下珠数屋町上ル卓屋町66-2▽電話:075-371-3688▽客室数:12室(40人収容)、一人利用可▽創業1915(大正4)年。▽料金:1泊2食付き1万7280円~、素泊まり9720円~。泊食分離で好きなスタイルを選べる。 ▽京都駅から徒歩5分、東本願寺が目の前の好立地。館内のそこここで生花が出迎える。
コラムニスト紹介
ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。
先日、TVCMで、女将さんの元気な姿を拝見し、京都の下京区が懐かしく思いました。近くに住んでいたこともあり・・・・より親近感が湧きあがりました。
あれこれと、PCを検索しながら、この欄を見つけました。
女将さんのバイタリティー溢れる笑顔と行動に乾杯です。
教の宿北海館「お花防」さんの益々のご発展を願っています。
お花坊女将さん、
お元気な姿テレビで拝見させて頂いて、
ありがとうございます。
早朝4時起床されていて、
私も毎朝4時起床しています。
これからもご活躍お祈り致します。
ありがとうございました。