「津田令子のにっぽん風土記(35)」非日常から日常に 安曇野の魅力伝える ~ 長野県安曇野市編 ~
2018年3月10日(土) 配信
JR穂高駅前にある、長野県の安曇野市観光情報センタースタッフの新谷さんは、2年前に東京都八王子市から移住してきた。きっかけは両親が安曇野に家を建てたことだ。ただ、新谷さんはもともと登山が趣味で、学生時代に初めて北アルプスに登ったとき、涸沢カールで「こんな景色があるんだ」と衝撃を受けた。その後も年に2、3回は安曇野の山に登りに来ていた。
「家を建てると聞いて、自分はどうしようかと迷いました。こちらには友達がいなかったのですが、毎日山が見られるな、それもいいかもしれないと思いました」。今では朝起きると、2階の窓から「山チェック」をしているそうだ。とくに冬の朝は綺麗で、モルゲンロート(朝焼け)で山がピンクやオレンジに染まる。「山の中に行かないと見られないと思っていましたが、普段から見られるんだと驚きました」。
また四季のはっきりとした移り変わりも感じるようになった。「それぞれ色が全然違って、春は一気にカラフルになって本当にきれいです。そしてここでは、自然と人が一緒に暮らしています。この間、東京の友達に『日がだいぶ長くなったね』と話したら『え、そう?』と返ってきて、はっとしました。東京にいたら気づかないことに気づけるのはいいことだと思います」。花の名前、1年の行事など、安曇野の人にとっては当たり前のことを知らないことに気づくことも多いそうだ。
観光情報センターでは、訪れる観光客に安曇野の情報を伝えている。写真を撮りたい人、絵を描きたい人が多く訪れるほか、女性客からは眺めの良いカフェやおいしいお店などを聞かれることも多いそうだ。また新谷さんは、以前海外に滞在していた経験を生かして、外国人客の対応や集計報告、英語ブログでの発信も行っている。
「私が移住してきて好きになったように、安曇野を好きになってもらえたら理想だなと思います」。今後は大好きな登山を生かして、登山ガイドもやってみたい、そこで外国人も案内したい、登山専門のビジターセンターもできたらいいと夢はふくらんでいる。
登山に来る場所から住む場所へ、非日常が日常になった新谷さんに、これからの時期の安曇野のおすすめの場所を聞いてみた。
「穂高川沿いに『早春賦』の歌碑があります。清流、アルプスの山、わさび畑に咲くわさびの花と、青・緑・白の、いい景色が集約された場所です。ぜひ行ってみてください」と笑顔で話す。
コラムニスト紹介
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。