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「味のある街」「サービス定食」――自由軒(岐阜県・養老町)

2018年4月7日(土) 配信

サービス定食 780円(税込)▽自由軒▽岐阜県養老郡養老町高田967-1▽電話:0584(32)0302。

 岐阜県・養老町には、親孝行の青年が滝の水をすくうと酒に変わっていたという話の伝わる「養老の滝」がある。奈良時代の717年、この話を聞いた元正天皇が元号を「養老」と改め、滝の名前を授けたとされる。昨年は「養老改元1300年祭」として、ウォーキングやコンサート、町民が地域の魅力を伝える体験型プログラムを集めた「養老まるごと玉手箱」など、さまざまなイベントが行われていた。ほかに、養老公園内にある「養老天命反転地」も有名だ。世界的なアーティスト、荒川修作さんのアート作品で最近は「インスタ映え」するとして若い世代にも人気がある。

 このまちにある食事処が自由軒だ。住宅街の中の店に入ると、野球のサインボールがずらりと並ぶのに驚く。壁には色紙も貼ってある。実はこの店から徒歩10分ほどのところには、野球バットやゴルフクラブなどを製造する「ミズノテクニクス」の養老工場がある。ここにバットを依頼しに来る野球選手が多く立ち寄る店なのだ。全国のプロ野球選手や、イチロー、松井秀喜らメジャーリーガーも訪れている。メニューもボリュームのあるものが多い。店内には食べ盛りの中高生のいる家族連れもいた。とくに人気なのは「トンテキ定食」だ。豚のステーキにデミグラスソースがかかっている。肉の量は250グラムとたっぷり。「トンテキ定食3/5」もあり、その名のとおり肉の量は5分の3の150グラムだが、それでもなかなかのボリュームだ。「トンテキ丼」もある。こうしたメニュー名、そして「トンテキ丼攻略法」などが手書きで壁に貼られているのが、レトロというだけではなく、温かい雰囲気をつくっている。

 今回は日替りのサービス定食をいただいた。この日出てきた、鶏などの天ぷらはボリューム満点だ。また、どて煮もついてきた。赤味噌で煮込む、東海地方ではよく食べられるメニューだが、牛すじ肉や糸こんにゃくが柔らかく、味がよく染みている。どこか懐かしい味だ。

 帰り際にはお店の皆さんが明るく見送ってくれた。お腹も心も満たされて、また来たくなる店だ。

 

コラムニスト紹介

トラベルキャスター 津田令子氏

社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

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