ペットと出かける旅、現状と問題点を報告、ペット法医学会学術集会
ペット法医学会は11月7日、東京都内で「ペットの住まいと旅」をテーマに学術集会を開いた。日本旅行赤い風船事業部の大島浩子担当部長は「ペットと出掛ける旅~受付・受入れの現状と問題点」を報告した。
「宿泊する際の約束事必要」「交通機関の乗り継ぎに難」
全国犬猫飼育率調査によると、08年の国内の愛犬飼育頭数は、犬が約1310万頭、猫が約1373万8千頭にのぼる。一方、旅の販促研究所の調べによると、ペット同伴旅行は日帰りを含め、半数近くの飼い主が経験しているが、1泊以上の宿泊を伴う旅行に関しては34・1%と低い。
未経験者のうち、犬の飼い主の約75%は一緒に旅行に行ってみたい意向を示しているが、旅行会社のパッケージを利用しての手配は3・3%と少ないのが現状だ。
大島氏は「ペットが家族とみなされることが多くなるに連れ、ペット同伴旅行の需要は高まっていく。しかし、現状では一部の受入施設側に明確な基準がないことや、しつけの行き届かないペットの飼い主とトラブルが発生しているのも事実。お客様と受入側との間で、宿泊する際の約束ごとが不十分で、対応が急がれる」と指摘した。
ペット同伴旅行が一般的な欧米などと比べ、交通機関を使った移動についても問題は多い。受け入れ条件が乗り物別、会社ごとに微妙に異なり、規則などで定めているだけで利用者にわかりやすい告知がなされていないためだ。「2つ以上乗り継ぐ場合、利用者にとって大変なわずらわしさがある」(大島氏)。
例えば、JRは有料手回り品扱いで、重量やケージに規定がある。料金は1個につき270円。全日本空輸は受託手荷物扱いで、ペットケージ1個1区間5千円。
観光施設については、東京ディズニーリゾートは園内のペット同伴は禁止。入口付近にあるペットハウスで来園当日のみ預かる。1匹2800円。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも園内禁止で、ケンネルで預かる。1日1匹1千円。
旅行業界の現状をみると、一般の人が同行する通常の募集型企画旅行はほとんど受け付けておらず、専用パッケージツアーも設定がないといっていい。個人旅行は宿泊施設・移動手段を規則などに従って手配するが、移動手段付の旅行の受付は少なく、ほとんどがマイカー旅行だという。
日本旅行は4月から、国内パッケージ商品「ペットと行ける宿」(設定は10月31日まで)を販売した。マイカー旅行者を対象に、11施設の宿泊プランを集めた。「夕食メニュー内容の選択」「客室グレードアッププラン可能」「宿泊施設からのお楽しみメニューの提供」などが付く。集客実績は348人で、今後も継続して販売していくか検討中という。また、ウェブ専用商品として、ペットの受け入れに積極的な施設を案内しているが、62施設に留まっている。
同社の契約施設(全国約5千施設)全体では、ペット受け入れ可能な施設は342施設。同室可能に限ると191施設と半数になる。また、同宿可能であっても、対応可能数が1施設あたり1―3室程度と少なく、小型犬のみや、シーズンによって受け入れ不可など制限がつくことが多い。
契約施設に実施したアンケート調査では、「事前連絡なしで利用され、他のお客様に迷惑がかかった」「宿泊不可犬(サイズ)の無理強いをされた」「浴衣、タオルで汚れを隠し、知らないふりをされた」など、一握りのルールを守らない飼い主のために、受け入れを考えざるをえないトラブル事例も集められた。
飼い主とのトラブルを未然に防ぐ工夫をしている受け入れ先進施設もある。「ペットと泊まれる本格旅館 群馬県草津温泉 音雅」では、宿泊に際して飼い主に、狂犬病、ワクチン接種が済んでいる、完全にトイレのしつけができている、遠吠えしないなど、約束事が書かれた確認書に記入してもらっている。
大島氏は「今後は、各宿泊施設において受け入れの際の約束事『受け入れポリシー』を作るなどの対応が必要。また、業界としてもガイドラインや基準づくりの対応がいる」と語った。