AI活用し、来訪を促すSNS (Deaps)
2018年4月16日(月) 配信
スマートフォン端末の普及と並行して、SNS(交流サイト)の利用率も増加傾向にある。 2016年の調査では、LINEやフェイスブック、ツイッターなど主要6種のうち、いずれかを利用している割合は全体で7割超。12年には4割程度だったが4年間で急増した(総務省情報通信政策研究所)。
口コミ効果が高いとされるSNS。「インスタ映え」が流行語となるなど、とくに注目が集まっているのが写真共有にフォーカスしたInstagram(インスタグラム)だ。20、30代女性の利用率がとくに高く(40~50%)、濃溝の滝(千葉県君津市)やナイトプールなど、インスタグラムへの投稿がブームのキッカケとなった事例も多い。
SNSの利点は発信・拡散だけではない。不特定多数のユーザーが利用するため、アナリティクスを駆使すれば、性別や年齢、趣味嗜好など、来訪する個人旅行者をより深く理解でき、ユーザーの需要把握にも役立てられる。団体旅行が減少するなか、ローカル地域にとって個人旅行者の取り込みは必須事項。交流人口の増加による消費額増を目指すためにも、ぜひ、SNSを軸としたデジタルマーケティングに注力したい。
普及が進むSNSに、AI(人工知能)技術を掛け合わせることで、新たな旅行需要の創出に寄与する企業も出てきた。富士通グループのスタートアップ企業Deaps Technologie(ディープス テクノロジーズ)が提供するiOS用アプリ「Deaps(ディープス)」は、投稿された情報をAIエンジンが集約・分析、必要とする個々のユーザーの趣味嗜好・ライフスタイルにベストマッチする配信を実現する。
同アプリは16年の提供開始以降、口コミを中心に1万5千以上のダウンロード実績を持つ。4月からは新たに、ユーザーの活動時間や場所を分析対象に加え、より精度の高い情報発信を可能にした。
注目すべきは場所にフォーカスした「ハッシュタグマップ」機能だ。インスタグラムをはじめ、SNSの強みは対象の認知拡大にある。どこに何があり、その魅力は何かを知ってもらうためには格好のツールといえる。一方、いかに対象スポット・エリアにリーチさせるかが課題でもあった。スマートフォン画面で見て、話のネタとして消費されてしまうだけでは、交流人口・消費増という目的を達成することはできない。ローカル地域にとっては、ユーザーがいいねボタンを押して拡散して終わらせるのではなく、実際に来訪を促す仕組みづくりが必要だった。
アプリ「Deaps」の「ハッシュタグマップ」では、ハッシュタグと地図をリンクさせることで課題解決を狙う。例えば、「#聖地巡礼」や「#マンホール蓋」といった任意のハッシュタグを付けて写真を投稿すれば、それらハッシュタグに関連した地図ページが自動で生成され、それ以降同一のハッシュタグが付与された投稿はすべて紐付けられる。旅情報を収集するユーザーは、趣味嗜好に合う観光スポット(場所)について、写真・位置情報双方を同時に知ることができ、周遊に向けた旅程作成に活用することができる仕組みとなっている。インスタグラムでも、投稿に地図情報を付与できるものの、使い勝手は「Deaps」には及ばない(4月16日現在)。
アカウントの作成は個人・法人問わず可能。フェイスブックなどと同様、無償で作成・投稿ができる。同社は、地方行政や観光協会らとの連携にも前向き。「企画内容に合わせて利用データを収集し、誘客増に結びつく施策などに役立ててもらえる」と広報担当者は本紙の取材に対し回答した。特集や、集客につながるイベントページの作成にも対応しており、継続したサポートを提供する。
2月には大紀町地域活性化協議会(三重県)とコラボ企画を実施した。残念ながら大紀町同協議会の担当者は不在のため話を聞くことができなかった。後日機会を見て取り上げたい。