「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(88) マニュアル行動よりお客様に寄り添う想い 業界の大きな問題点
2018年5月12日(土) 配信
数カ月前に予約したそのホテルは、予約時決済と変更不可の条件が付いていました。泊りたいホテルでしたので、連泊で予約をしてその日を楽しみに迎えたのです。しかし、ホテルに到着してから翌朝までの対応に不快さを感じて、1泊のみで翌朝にはチェックアウトしました。
そのときフロントスタッフに、「アーリーチェックアウトですね」と笑顔で対応され、思わず苦笑いをしてしまいました。マニュアル行動としては、素晴らしい笑顔の対応だったかもしれませんが、決して安くはないラグジュアリーホテルの対応としては、合格点とはいえません。
2泊分を支払っているお客様が、1泊でホテルと去ろうとしているのです。何かホテルの対応に問題があったのではないだろうか。あるいは、体調がすぐれないなのではないか。1泊の予約と勘違いされてはいないだろうか。いろんな疑問を持ちながら、「2泊でご予約は伺っておりましたが……」というような、問い掛けがあってもよかったのではと思いました。それから1カ月過ぎましたが、今日まで連絡はありませんでした。
出張当日に航空会社の欠航に伴い、他社便を利用することになりました。自分で取った予約なので、航空機の事前割引料金と他社の当日予約料金の差額は、後日返金することになっていました。
後日、手続きに必要な書類の案内メールが届きましたが、うっかりそれを削除してしまったのです。別日に空港カウンターでその旨を伝えましたが、カウンターの端末機械にはその情報が入っていなかったようです。出発までの時間もなかったので、また改めようと、「では結構です」とカウンターを離れました。
カウンターでは、お客様と日常によくある会話の1つだったと思いますが、このカウンタースタッフにとっては、その場で解決した会話ではなかったのです。その日のうちにお客様センターから、「せっかく声を掛けて下さったのに対応できず本当に申し訳ありませんでした」とメールが入り、返金手続きの方法が書かれていました。
後日、搭乗便のチェックインカウンターで返金してもらったのですが、その搭乗便のCAからは「過日は欠航でご迷惑をおかけしました」と言葉をかけられ、驚いてしまいました。
ホテルと航空会社にとって私は、顧客という程の利用はありません。しかし、この2つの事例にこそ、今のサービス業界の大きな問題点があると思うのです。決められた行動をより上手くこなす事が日々の目的になってしまっている。
マナーは教えられても、その行動の「真の目的」を正しく伝えられる人が不足しているのです。
コラムニスト紹介
西川丈次氏
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。