「味のある街」「アップル&ローゼスタルト」――アップル&ローゼス(長野県安曇野市)
2018年5月6日(日)配信
アップル&ローゼスは長野県安曇野市の安曇野アートヒルズミュージアムの敷地内にある。エミール・ガレ美術館や吹きガラス工房などがあるこの場所で、カフェを併設する店内は、おしゃれで上質感に満ち、目前に異空間が出現したかのようだ。
さまざまな菓子が並ぶが、看板商品は店名を冠した「アップル&ローゼスタルト」。リンゴのスライスが、バラの花が咲いたような形になっていて、かわいらしく華やかなタルトだ。さくさくとした生地と、リンゴの酸味と甘味が絶妙なハーモニーを奏でる。2017年には第27回全国菓子大博覧会で、最高賞である名誉総裁賞を受賞した。
使われているのは長野県産のリンゴ。時期によって、紅玉、ピンクレディーなどの品種を使い分けている。「同じ地域でも、作り手や土壌によってリンゴの味は変わります。それぞれの特徴に合わせて、例えば傷みやすいものはピューレにするなど、使い分けています」と代表取締役の呉羽英樹さんは話す。表皮が美しい生食用のAクラスのリンゴのみを使用しており、赤やピンクの色は皮から出した自然な色だ。花びらは1枚ずつ手作業で、ピンセットで開く。
呉羽さんは長野県小布施町出身。家の周りにはリンゴ畑があり、母親はよくアップルパイを焼いてくれた。その後は東京に出てデザインや写真、店舗開発などの仕事をしていた。仕事でアジアに行くと、見かけるリンゴは青森産ばかり。長野のおいしいリンゴを紹介したいと、最初は青果の販売を考えたが、なかなか条件が整わない。それなら加工品。それもかわいい、目を引くお菓子にしたらどうかと呉羽さんは考えた。バラの形のタルトは米国の家庭などでも作られているものだが、それをプロの技術を使った本格的な菓子として商品化した。
「お菓子の『花』で、誰かの大切な人への思いを形にしたいという思いも、開発の一つのきっかけです」。
15年に店を始め、今では期間限定で全国の百貨店に出店する人気だ。インターネットからも注文でき、タルトは冷凍で配送してくれる。
(トラベルキャスター)
コラムニスト紹介
トラベルキャスター 津田令子氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。