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「観光革命」地球規模の構造的変化(198)ホテルプロフェッショナルの育成

2018年5月1日(火) 配信

優秀なホテルプロフェッショナルの育成を

 スポーツや将棋での若手の活躍に刺激を受けた少年少女があとに続けとばかりに関心を高めている。翻って観光分野に目を向けると若者が強い関心を抱く分野にはなっていないが、評価すべき動きもみられる。

 日本ではインバウンドの激増に伴って、観光立国が本格化している。昨年のインバウンドは2869万人を記録し、今年のインバウンドは3千万人を超えることが確実になっている。その一方で、日本の宿泊業では人手不足が深刻化している。また宿泊業では従業員の離職率が高く、優秀なホテルプロフェッショナルの育成が最重要課題になっている。

 北海道観光の牽引役を担う道内最大手のリゾートホテルチェーン野口観光は今年4月に「野口観光ホテルプロフェッショナル学院」を開校した。学院は2年制職業訓練校で、今年4月1日にリニューアルオープンした新苫小牧プリンスホテル「和~なごみ~」に併設されている。

 野口観光ホテルプロフェッショナル学院には、第1期生として今春高校を卒業した32人が総合ホテル学科に入学した。ホテルの基礎知識とおもてなしだけでなく、ホテル経営についても教育を行い、おもてなしのトータルクリエイターを養成する。職訓校生は野口観光グループの正社員として雇用され、毎月給料をもらい、全寮制で学んでいる。

 職訓校生は学院で学びながら、サービス業に関わる各種資格取得が奨励されている。1年生必修では日本の宿おもてなし検定初級、全商簿記検定3級、北海道観光マスター検定、危険物取扱者、普通救命講習、観光英語検定3級、サービス接遇検定3級。2年生必修では日本の宿おもてなし検定中級、食品衛生責任者、防火管理者、上級救命講習。さらに任意で、実用英語技能検定、日本中国語検定、ホテルビジネス実務検定、レストランサービス技能検定など。

 学院長の野口秀夫社長はホテル業の国際化への対応がはかれるホテリエ(ホテル経営者・責任者)の養成を目指している。宿泊業の人手不足が深刻化するなかで、野口社長は若者たちが誇りを持ってホテルプロフェッショナルとして活躍できる基盤づくりに挑戦しており、その試みは高く評価できる。観光分野における「後生畏る可し」の具現化に期待したい。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森 秀三)

コラムニスト紹介

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

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