日本独自の医療観光を、大阪でセミナー開く
「日本医療への信頼性高い、医療通訳の人材育成が急務」
訪日外国人のメディカルツーリズム(医療観光)をテーマにしたセミナーが7月22日、大阪市中央区の大阪産業創造館で開かれ、全国から約200人が参加した。
基調講演では近畿経済産業局総務企画課の遠藤浩規企画係長が「メディカル・ツーリズム政策~これまでと今後~」と題して講演。経済産業省が今春実施した外国人へのモニターツアーでは日本ブランドや日本医療への期待、信頼、ホスピタリティへの満足度は非常に高いという結果が出た。遠藤氏は「医療施設での文化的・宗教面の配慮、多様な対応が求められている」と今後の課題をあげた。
JTBヘルスツーリズム研究所の高橋伸佳所長は「メディカルツーリズム最前線~巨大ビジネスの可能性を探る~」をテーマに講演。その中で2006年の世界の医療観光者数は年間600万人に達し、受け入れ先としてアジア圏ではタイが年間140万人、マレーシアは07年で34万人、シンガポールは同57万人という実績を紹介。「韓国も09年に5万人を受け入れるなど集客を強化している」と説明。
高橋氏は「中国人の25・5%が医療目的で海外旅行し、治療は欧米、健診はシンガポールやタイ、美容は韓国と目的別に旅行先を選択している」と述べ、日本の医療観光への対応の遅れを懸念した。
JTBでは4月に、訪日外国人向け医療観光の専門部門として「ジャパンメディカル&ヘルスツーリズムセンター」を設立。予約手続きの代行や医療知識のある通訳の手配、病院までの交通や宿泊手配などの取り組みを始めた。
高橋氏は「国内医療機関と患者をつなぐ仲介役の存在が重要。日本が持つ医療技術の高さや信頼性のPRに加え、24時間体制でサポートできる医療通訳などの人材育成、医療リスクや説明責任などの課題をクリアする必要がある」と指摘した。
このあと「メディカルツーリズムと周辺ビジネスの可能性を探る」と題したパネルディスカッションも行われ、高橋氏をコーディネーターに、日本渡航医療会理事長の西山利正関西医科大学教授、有馬温泉の旅館「兵衛向陽閣」の西浦圭司営業企画課長、近畿経済局の遠藤氏がパネラーとして登壇した。
西山氏は医療現場の立場から「高い医療知識と言語能力を持った医療通訳の人材育成が急務。日本の高度先進医療技術や、美容整形技術を観光と組み合わせれば、日本ならではの医療観光を促進できる」と語った。
「向陽閣」の西浦氏は「香港、韓国、中国からのお客様が多く、スタッフは月4回の語学研修で英・韓・中の語学を習得し、自社ホームページは4言語に対応している。中国語の発音には苦労している」と現場の状況を報告。
一方で「当日のキャンセル料が取れないことや時間にルーズ」などマイナス面にも触れた。
遠藤氏は「関西に海外から医療観光を誘致するにはポテンシャルの明確化が必要。2府5県にとらわれずエリアでPRする必要がある」と述べた。
高橋氏は「医療観光は団体ではなく個人が主流になる。日本ならではの湯治やリハビリ技術がPR材料だ。まだ外国人に対応できる医療機関が少なく、決済システムの構築も課題だ。早急に日本流のメディカルツーリズムを作る必要がある」と強調した。