ソウル市 観光バリアフリー化へ、日本人障がい者招待しモニターツアー実施
韓国・ソウル市は観光地のバリアフリー化を目指したプロジェクトの一環として、6月5―8日までの4日間、日本人の障がい者を招待したバリアフリー観光のモニターツアーを行った。南山タワーや明洞、清渓川、南大門市場、光化門、景福宮などの観光コースを車イス利用者などが実際に体験。7日に開いたセミナーでは参加者の感想を聞き、意見交換を行った。今回のツアーで抽出したさまざまな課題を改善・整備していくことで、「ソウル市を障がい者が観光するのに一番便利な都市にしていきたい」(同市)考えだ。ツアーに同行した「オールネクスト」クリエイティブディレクター・梶原正氏のレポートをもとに紹介する。
(増田 剛)
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「世界的観光都市へ課題整備」
ソウル市は世界的な観光都市としての確立を目指し、観光地バリアフリー整備と、障がい者観光の支援に取り組んでいる。同市は2010年の障がい者福祉基金支援事業として、「障がい者オーダーメイド型ソウル観光プログラム開発運営事業」を立ち上げた。
同事業では、社会福祉法人ハンボッ財団に、ソウル市内観光地のバリアフリー調査を依頼。さらに、バリアフリー整備や、障がい者観光コースの開発、日本や中国の旅行会社への広報なども実施していく。
実態調査では、バリアフリー旅行業界や障がい者当事者、学界、関係専門家などで諮問会議を開き、最終的に対象観光地50カ所を選定した。今後11回にわたってモデルツアーを実施する。国内・海外の障がい者が、ソウルの観光名所のモデルツアーで観光コースや、バリアフリー設備などについて点検、評価を行う。これをもとに、テーマ別のオーダーメイド型観光コースを10本程度開発する計画で、1コースは、女性障がい者の特化コースとする考えだ。
6月に実施した「日本障がい者招待モデルツアー」には、自治労東京都本部障害労働者連絡会議代表幹事、東京都福祉保健局の新井常美さん(車イスユーザー)やバンクーバーパラリンピックのアイスレッジ銀メダリストで同じく車イスユーザーの高橋和廣さんなど7人が参加。南山タワーや清渓川など人気観光地や、ナンタ公演観覧、ショッピングなどの観光コースを実際に体験した。ツアー後半には、参加者らが観光地の感想や意見を出し合うセミナーを開いた。
新井さんは「多くの施設は車イスのまま直接観光できた。とくに新しい建物は車イスでも1人で十分観覧できた。地下鉄の車両は広く、車イスユーザーにはありがたい。ホームと車両の段差がなく、安心して移動できた。ノンステップバスから電動でスロープが出てきて感動した。日本の障がいを持つ知人にもソウル観光をすすめたい」と語った。
高橋氏は「仁川空港で荷物を運ぶ際には、空港職員が常に付き添ってくれて助かった。案内には日本語表記も多く安心感がある。観光では、ソウルタワーで日本の障害手帳が通用して割引制度が適用され驚いた。各地とも坂道が多く大変だったが、案内地図が充実していたので楽しく観光できた。以前、大きな通りに横断歩道がなく不便を感じたが今回はできていた。街の改善に意欲的だと実感した」と感想を述べた。参加者からは、このほかにもさまざまな視点から意見が出された。
ソウル市はこれらモデルツアーや、観光地バリアフリー実態調査によって得られた情報(文化施設や、ショッピング街、宿泊施設、飲食店など利用可能な施設)を「障がい者ソウル観光案内冊子」として発行する考え。また、2011年にはソウル市障がい者ホームページ(http:friend.seoul.go.kr)で、障がい者観光情報をひと目で探せるサービスを提供する予定だ。