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失敗から学ぶ「ご当地グルメ」

2010年10月1日
編集部
「JRC観光振興セミナー ヒロ中田氏が講演」
「JRC観光振興セミナー ヒロ中田氏が講演」

 B級グルメグランプリが注目を集め、ご当地グルメブームといえるような盛り上がりを見せる観光地がある。香川県の讃岐うどんはもとより、大分県中津市の中津から揚げ、静岡県静岡市の富士宮やきそば、神奈川県厚木市の厚木シロコロホルモンなど、魅力的なご当地グルメは多くの人を惹きつける。8月19日、東京都内で開かれたじゃらんリサーチセンター(JRC)観光振興セミナーで同センターのヒロ中田(中田博人)エグゼクティブプロデューサーが「失敗パターンから学ぶ『成功するご当地グルメ』の創り方」と題し講演した。中田氏は長年にわたり「新・ご当地グルメ」を提唱し、北海道、栃木県、宮崎県、新潟県の20数市町村で食をテーマに地域活性化に取り組む。個人的な経験に基づいて経験則を語った。

「商売ではなく地域を売るツール」

 中田氏は失敗パターンを10の「P」別に分類。10の「P」は(1)POLICY=大義(2)PRODUCT=商品(3)PRICE=価格(4)PLACE=流通・販売チャネル(5)PEOPLE=人・組織(6)PRIVATE MONEY&PUBLIC MONEY=お金(7)PLAN=目標(8)PROMOTION=広告宣伝・販売促進(9)PLAY=遊び心(10)PRODUCER=プロデューサー。

 (1)のPOLICY=大義は、ご当地グルメづくりを安易な事業として始めることをすすめない。「ご当地グルメを定着させるには相当なパワーと時間がかかる。事業ではなく、食による観光まちづくり運動としてやる。最低でも10年は続ける覚悟があるか。単年度事業では長続きしない」。

 商品を売るために始める、商品開発の際、地場産の食材にこだわらないのも失敗パターン。「ご当地グルメはあくまでも地域を売る、地域に貢献するためのツール。目的と手段を混同してはいけない」。

 (2)のPRODUCT=商品は「マーケットイン プロダクトアウト」がキーワード。「消費者がここにきて何が食べたいのか、期待しているものは何かという観点が必要」。自分たちが作りたいものや、思いつきで作ったもの、みんなの意見をまとめて作ったもの、定義、ルールがゆるいもの――はすべて失敗パターンという。

 (3)PRICE=価格についても消費者の立場に立った視点が重要だ。「商品の満足度を検証しながら逆算をする」。原価の積み上げで定価を決める、原材料を普通に仕入れる――は失敗パターン。「農協や漁協などの生産団体に協力してもらい特別な仕入ルート、価格で仕入させてもらう。そうしければ魅力的な価格にはならない」。

 (4)のPLACE=流通・販売チャネルは、参加店舗を増やし、少しずつ影響力、存在感を高めていく必要性を説く。取り組みを始めて2年目以降、参加店舗数が増えない、もしくは減るのは明らかな失敗パターンだ。

 (5)PEOPLE=人・組織については、最低でも10年続くような人選・組織が重要。地域の人だけで、おじさんたちだけでやってしまう、観光協会などの会長をとりあえず組織の長にする、行政と飲食店のみで組織を作るのは失敗パターン。地域の狭い人間関係で閉じるのではなく、いろいろな人にチームに参加してもらうのが鍵。「商工会議所や観光協会、青年会議所といった地域内の団体と連携しながら盛り上げていく」。

 (6)PRIVATE MONEY&PUBLIC MONEY=お金は、税金頼りのご当地グルメづくりを否定する。「税金頼りでやろうとすると2年目以降に予算がつかず、ほとんどの場合、失敗する」。そこで必要になるのがお金の貯まる仕組み作り。有効な仕組みは、ロイヤリティ制度。例えば商品が1食売れると、組織に50円が入るといった仕組みを作る。

 (7)PLAN=目標は、年間販売目標などの数値目標はもちろん、地域にどう貢献できるのかの観点から価値目標の設定が重要になる。具体的取り組みとして食育や食に絡んだイベントの開催などがある。「ご当地グルメは地域に人を呼び込むための呼び水。単純に商品の売り上げを伸ばせばいいという問題ではない」。

 (8)PROMOTION=広告宣伝・販売促進もご当地グルメを定着させる上で重要になる。「商品は作ったが仕掛け、話題づくりを一切しないのでは、それで終わってしまう。プロモーション費用は必要経費」。

「10年続ける覚悟はあるか?」

 広告や、無料パブリシティへの情報発信以外に、自ら情報発信する必要もある。「ブログ連動型の公式サイトを活用しながら、基本は毎日、情報を更新する。大変なことだがこれぐらい腹をくくらないと、競争に負けてしまう」。

 (9)PLAY=遊び心は、やらされ感ではなく、楽しくゲーム感覚を持ってやろうということ。その結果として地域の交流人口は増え、参加する飲食店の利益につながる。

 最後に(10)PRODUCER=プロデューサーは、(5)の人・組織にもつながるが、地域の人だけでご当地グルメづくりに取り組むことをすすめない。「よそ者のプロのプロデューサーが必要」。

 ヒロ中田氏が携わったご当地グルメプロジェクトは「新・ご当地グルメ公式サイト」(http://www.shingotochi.com/)で紹介している。

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