No.264 トップインタビュー 兵庫県豊岡市 中貝 宗治 市長 - コウノトリをめぐる物語
トップインタビュー
兵庫県豊岡市 中貝 宗治 市長
コウノトリをめぐる物語
10月、愛知県名古屋市で国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開かれた。最近よく耳にする生物多様性という言葉。この分野において国内で先頭を走っているのが兵庫県豊岡市だ。2005年、絶滅寸前だったコウノトリの野生復帰を実現した。「コウノトリも住める環境を取り戻す」を目標に住民、行政が一体となった取り組みが進む。COP10においても豊岡の事例は大きく紹介され反響を呼んだ。中貝宗治市長に「コウノトリをめぐる果てしない物語」を聞いた。
【沖永 篤郎】
「豊岡エコバレーの実現へ」
「コウノトリも 住める環境」
――豊岡市はなぜコウノトリの野生復帰に取り組むのですか。
かつてコウノトリは日本中で見られる鳥でしたが乱獲や環境の悪化によりどんどん数を減らし、1960年代には絶滅寸前になっていました。1966年には豊岡が日本最後の生息地になり、1971年ついに絶滅してしまいました。地元ではなんとかコウノトリを守ろうと努力があり絶滅の6年前の1965年に人工飼育が始まります。しかしなかなかヒナはかえらず暗闇のなかのような時代が続きます。人工飼育を始めて25年目の1989年、待望のヒナがかえったあとは順調に増えていきます。
私が県会議員になった91年、飼育員たちに会い「コウノトリを空にかえしたい」という夢を聞きます。「捕獲したときにいつか空にかえすと誓ったんだ」といい、20年以上ひたすらその思いでやってきたということにジーンときて、その夢を叶えたいと思ったのです。失われそうな種を守るということは、生物保全という観点でも意味のあることだと思いました。
ところがどんどん進めているうちにコウノトリは環境破壊によって絶滅した鳥で、環境を取り戻さないと野生で生きていくことはできないとわかります。ここで最大の狙いである「コウノトリも住める環境」というフレーズが出てくる。コウノトリは完全肉食の大型の鳥。こうした鳥が野生で生きていくには豊富なエサが必要です。多様な生き物がいる自然環境を再生するということは人間にとってもよい環境になるに違いないということです。
※ 詳細は本紙1400号または日経テレコン21でお読みいただけます。