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「観光革命」地球規模の構造的変化(199)「感幸の時代」への期待

2018年6月4日(月) 配信

ホストとゲストの双方が幸せを感じられる「感幸」の創出へ

内閣府が5月中旬に発表した今年1月から3月期の国内総生産(GDP)速報値は、年率換算で0・6%減であった。マイナス成長は2年ぶりのことで、日本経済の先行きへの不透明感が強まっている。今回マイナス成長に転落した最大の要因は、内需の柱である個人消費の落ち込みだ。その影響は当然、旅行消費の伸び悩みにつながる。

 国連は2013年から毎年「世界幸福度ランキング」を発表している。幸福の追求は人間の営みの核心であり、充実した生活を送ることは全世界の人々の共通の望みだ。幸福追求のためには物質的な経済成長ではなく、より公平でバランスのとれた成長が必要として「国民総生産(GNP)よりも国民総幸福(GNH)こそが重要」と主張するブータンによる提唱が全世界で認められたわけだ。

 国連の幸福度ランキングは世界156カ国の各国それぞれ約3千人を対象にして行った「ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)」に関するアンケート調査にもとづいている。人生に「幸せ」を感じる度合いと「不幸せ」を感じる度合いについて6つの指標で分析している。6指標は、①1人当たり国内総生産(GDP)②社会的支援の有無③健康寿命④人生選択の自由度(生き方を自由に選択でき、満足しているか)⑤寛容さ(過去1カ月間に慈善事業に寄附したか)⑥腐敗認知――。 

 18年の幸福度ランキングのトップ10は、①フィンランド②ノルウェー③デンマーク④アイスランド⑤スイス⑥オランダ⑦カナダ⑧ニュージーランド⑨スウェーデン⑩豪州――の順。北欧5カ国がトップ10入りしているのは、社会的支援の充実、人生選択の自由度、社会腐敗の少なさ、寛容さなどが実現されているためだ。一方、日本は54位で、世界第3位の経済大国ではあるが、幸福度の低さは残念である。 

 日本でも90年代初頭にバブル経済が崩壊してから観光のあり方が見直され「観光」に代わって、新たに「感幸」というコンセプトが提唱され、さまざまに議論された。その要点は、観光という営みにおいてホストとゲストの双方が「幸せ」を感じることのできる在り方(感幸)の創出であった。 

 今後、「感幸の時代」の到来が期待されている。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森 秀三)

コラムニスト紹介

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

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