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日本経済の新たな”稼ぎ手”に 観光庁が観光白書を発表

2018年6月6日
編集部:平綿 裕一

2018年6月6日(水) 配信 

インバウンドの増加が日本経済に影響を与える(画像はイメージ)

 

観光庁はこのほど、2018年の観光白書を発表した。観光白書は4部で構成する。このなかのテーマ章で、近年の訪日外国人客が日本経済に与える影響を分析。旺盛な訪客に対する宿泊業の建築投資は約1兆円に上ることが分かった。名目GDPに対する寄与率では、12年と比べ約2・6倍も増えている。観光が日本経済の新たな“稼ぎ手”として、大きく成長しつつあるようだ。

 17年の訪客数は2869万人で5年前と比べ約3・4倍に増え、消費額も4・4兆円と4・1倍ほど伸びている。訪客数は今年4月までの累計で、過去最速で1千万人を超えるなど勢いは続く。政府はビザの戦略的な緩和や各種プロモーション、消費免税店制度の拡充など、さまざまな手を打ってきた。

 日本経済への影響は消費額の外にも及んでいる。宿泊業の建築物工事予定額は、5年前の1121億円から、約8・4倍の9431億円となった。地域別の伸び率では、北海道が34・5倍で最も高い。続いて近畿が17・7倍で、四国と九州は10倍近く伸びている。

 訪客数増加による影響は宿泊業だけではない。大手化粧品メーカーは人気の高い化粧品の安定供給を目指し、37年ぶりに国内工場の建設に踏み切った。製菓メーカーでは17年に約75億円を投じて生産棟を新設。このほか、包装容器や日用品メーカーなどが全国各地で設備投資を行っていることが分かった。

 一方、訪客に人気の日本製品は国内消費とともに輸出額も増えている。訪日観光をきっかけに、越境ECで日本製品を購入した規模は、年間約6~8千億円(中国、台湾、香港、香港、米国の合計)に上った。

 このほか、景況感の形成にも影響を与えている。内閣府の景気ウォッチャー調査に基づき調べると、「爆買い」などがあった15年に、景気回復の判断理由に訪客などを挙げる割合が急増した。他方、円高が進んだ16年は、爆買いが収束し「景気が悪化している」判断理由に、訪客などを挙げる割合が増えた。観光庁は景気の判断に良くも悪くも訪客の存在が高まっているとみる。

 さらに12年から16年にかけての名目GDP成長率を比べると、観光GDPは23・0%で、自動産業とほぼ同じ伸びを示した。名目GDP成長率の寄与する割合も大きく伸びた。同期間に名目GDPが43兆円程度増えたなか、観光GDPは約2兆円増加し4・5%の寄与率となった。12年の時点で寄与率は1・7%ほどで、約2・6倍経済成長に貢献したことになる。

 「日本経済の主要な成長エンジンになってきた」(観光庁)と表情は明るい。

 一方で、インバウンド消費対名目GDP比の国際比較をみると、日本は0・6%で、タイは12・0%、韓国は1・2%と、まだ水準は低い。観光庁は「観光立国へはまだ道半ば。さらなる拡大の余地がある」と調査を振り返った。

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