長期化する「就活」が旅行できない要因に 若者旅行振興研究会
観光庁は2月14日、若年層旅行旅行市場の振興を検討する「若者旅行振興研究会」の第2回会合を開いた。楽天トラベルからは女性の若年層に人気のキャラクターを使用した「キャラクターツーリズム」など新たな可能性も示された。
(増田 剛)
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今回は、若者旅行に取り組んでいる旅行会社や観光団体、地方自治体などの活動報告を行った。ダイヤモンド・ビッグ社は、「大学生は社会貢献活動を通じて『人と語りたい』『人と繋がりたい』という意識が強い」との仮説を立て、「秋田県横手市かまくら祭りボランティアスタッフ体験と雪国交流4日間」など9つのモニターツアーを造成。同社「地球の歩き方」編集本部副本部長の奥健氏は「9コースのうち、ボランティアの比率の高いツアーの方が申込みの比率が高い傾向にある」と報告した。
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楽天トラベル執行役員事業推進第二部長の上山康博氏は、「現代の若年層が旅行をしない要因の1つに、旅行の目的地となる観光地や温泉地などに、魅力的なコンテンツが不足していることが考えられる」として、現在の若者が関心を持ち、今や日本を代表するカルチャーとして世界的にも関心が高いキャラクターを付加価値として加えて、若年層の旅行需要を喚起する」というキャラクターツーリズムを提唱した。
実際に、楽天トラベルは2月23日から3月末(予定)まで、長野県・渋温泉のホテル・旅館23施設と協力して、若い女性に人気のキャラクター「カピバラさん」を使用して、それぞれの宿に1室「カピバラさんルーム」を設置する宿泊プランを展開する。室内ディスプレイやアメニティグッズ、浴衣、お風呂セットなど「カピバラさん」のキャラクターを用いて、非日常の空間を醸し出す。「カピバラさん」ファンの10―20代前半の男女をメインターゲットとして2月17日から予約をスタート。集客目標は、500人限定としている。
「カピバラさん」は、2002年にバンプレストから生まれた「ゆるキャラ」。なごみ系として人気のカピバラ(南米の水辺に住む世界最大のネズミ)をモチーフに、アミューズメント景品として誕生。F1層(20―30代女性)の好感度調査では、リラックマ、プーさん、ミッフィ、トトロに次いで5位という。上山氏は「今後は、マンガやアニメのキャラクターまで広げていける。また、海外では、日本のコンテンツへの評価が高く、インバウンドの旅行者を誘客するきっかけづくりにもなる」と述べた。
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リクルートのじゃらんリサーチセンターは、溝畑宏観光庁長官を名誉顧問に、9大学12人の現役大学生(ミスキャンパス3人を含む)が「旅プロデュース部(旅P)」を設立。学生が選ぶ「こんな宿に泊まりたい!宿泊プラン50選」など若者向け宿プランづくりや着地型商品づくりを実施した。
横山幸代研究員は「『旅プロデュース部』は学生を地域振興に巻き込むという考え方。学生たちは熱海温泉で1泊2日の合宿を行ったことによって、熱海という土地に対してロイヤリティーの意識が高くなっていき、熱海のサステイナブルツアーなどについて真剣に考えるようになった。旅行はこれまで『楽しめばいい』という消費商材だったが、旅行が自分たちの経験値を上げることができる投資商材だということに気づいていった」と述べた。
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一方で、大学生が旅行や留学ができづらい環境にある大きな原因として、3年生の秋から始まる「就活」の存在の大きさも議論の的となった。日本学生連盟代表で帝京大学3年生の小幡沙織さんは「学生は旅行や留学をしたいという気持ちはすごく強いが、就職が決まるまでは親が心配して行かせてくれないケースが多い」と話した。「せっかくいい旅行プランがあっても、就職活動中の大学生が旅行にいくことは難しいと思う」と述べた。
同研究会は3月中に第3回の検討会を開き、何らかの方向性を示す予定だ。