No.272 九州新幹線全線開業 - 九州新時代へ キーマン鼎談
九州新幹線全線開業
九州新時代へ キーマン鼎談
2011年3月12日、九州新幹線が全線開業する。新大阪―鹿児島中央が4時間を切り、国内観光の活性化や、距離の近さを活かしたアジアからの観光客増加への期待など、さらに九州への注目が集まっている。九州旅客鉄道(JR九州)会長の石原進氏と、第22回全国旅館おかみの集い運営委員長の有村政代女将(熊本県清流山水花あゆの里)に衆議院国土交通委員長の古賀一成氏を加え、九州観光業界を代表する3人の鼎談が実現した。
【司会=旅行新聞新社社長・石井 貞徳 構成=伊集院 悟】
石原 ― 2次交通がポイントに
宝と宝をつなぎアピールを ― 古賀
有村 ―「人情味」は九州の宝
――3月12日に九州新幹線が全線開業します。
■石原:04年に新八代から鹿児島中央まで九州新幹線が部分開業しましたが、そのときは、ご利用のお客様が約2、3倍に増えました。今回の全線開業で関西圏から乗り換えなしの1本の列車でつながり、より大きな人の流れが生まれます。
今まで、関西や中国・四国地方の人たちは東の方に目が向きがちで、名古屋に行く人の半分くらいしか九州に来ていませんでした。この全線開業をきっかけに、九州の魅力溢れる温泉や自然、文化、食などを関西、中国・四国地方へと発信していきたいと思っています。
また、韓国・中国・台湾・香港など海外からの観光客にも期待しています。韓国からはすでにたくさんの人が九州を訪れていますが、これからは1千万人ともいわれる中国人観光客を日本中で取り合う時代になると思います。
ビジネス面でも期待が大きく、新大阪から熊本まで3時間を切り、鹿児島中央までは4時間を切ります。今後九州への企業進出のチャンスも出てくるのではないかと期待しています。
――旅館の女将として関西圏からの受け皿としての取り組みはいかがですか?
■有村:関西のお客様には非常に期待をしており、昨年10月には蒲島郁夫熊本県知事とタレントのスザンヌさん、熊本県の女将会総勢30人で関西に行き、九州・熊本のPRを行いました。
私の地元・人吉では、全線開業の3月12日に、小京都と呼ばれる街の特徴を生かし舞妓さんが街を練り歩く「花魁道中」を、3月20日には肥薩線開業100周年を記念した「ノスタルジック人吉!100年前にタイムスリップ」を行います。熊本―人吉を走るSLの発着に併せて、100年前の格好をした人が街を闊歩。バイオリンとアコーディオンの流しの演奏があったり、コマまわしをやったりと100年前を再現します。
観光客を迎えるうえで大切なのは、観光従事者だけでなく、地元住民一人ひとりが「意識を持って観光客を迎える」という意識改革です。歴史をしっかりと学び、誰もが街の歴史を語れるようになり、地域と旅館にファンを作ることが大切だと思います。
■石原:住民の意識というのはとても大切で、例えば、街を汚さずにキレイにしたり、庭先に花を植えたり、観光客に出会ったときに笑顔であいさつしたりするなど、それだけでも観光客の街に対する印象は全然違うと思います。
――九州出身の古賀委員長は全線開業をどう見ておられますか?
■古賀:せかせかしなくても食べる物には困らないというのんびりさが、元来九州の人にはあり、観光業界も例外ではなかった。けれでも、これからはしっかりとアピールをしていかなくてはいけない時代だと思います。
九州は自然環境にも恵まれており、それぞれの地域で、文化、歴史、食、伝統と宝がたくさんあるのに、地元の人は当たり前すぎてその宝の魅力になかなか気づけない。今回の新幹線全線開業が宝探しのきっかけとなればいいと思います。新幹線やそのほかの2次交通は宝と宝を結ぶ移動手段。宝と宝をつなぎ合わせ、真珠をつないだキレイなネックレスのようにして国内外にアピールしてほしいです。
※ 詳細は本紙1412号または日経テレコン21でお読みいただけます。