「有休取得率アップが先では?」労働界から提言
観光庁と関東運輸局は3月3日、「休暇取得の分散化に関する地方意見交換会」の関東版として「休暇シンポジウム」を時事通信ホール(東京都中央区銀座)で開き、東芝の西田厚聰会長による特別講演や、各界を代表するパネリストたちによるパネルディスカッションを行った。
西田会長は講演で「日本では、年末年始・GW・お盆などに旅行需要が集中しすぎている。日数的には1年間の6・6%にすぎないが、この短期間に1年間の旅行量の40・9%が集中している」と話し、「分散化されれば、各産業界に波及効果の高い観光産業が安定的に発展していく」と語った。
パネルディスカッションでは、日本総合研究所副理事長の高橋進氏をコーディネーターに、ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也氏、全日本中学校長会総務部長で渋谷区立上原中学校長の大江近氏、労働政策研究・研修機構主任研究員の小倉一哉氏、日本労働組合総連合会社会政策局長の杉山豊治氏、日本経済団体連合会観光委員会企画部会長の生江隆之氏、東京商工会議所地域主権推進委員の増井雄二氏が登壇。それぞれの立場から秋の大型連休創設と分散化について意見を述べた。分散化について賛否両論さまざまな意見が出るなか、労働界からは、「ムリに休日を増やし分散化させるよりも、今ある有給休暇の取得率をアップさせる方が、特定の業界にシワ寄せが集まることがなく、良いのでは」との意見が出て、教育界からも子供への負担を心配する声もあがった。また、賛成意見のなかには、「すべての業界がプラスになるというのは現実的に難しく、しわ寄せがある程度出てしまうのは致し方ないこと」など、観光庁側が説明する「メリットを最大限生かし、デメリットの最少化」を推す意見も出た。
観光庁の溝畑宏長官は最後に「こういった議論は20年前から出ているがなかなか前に進まない。みなの意見をしっかりと聞き、準備期間を十分取り進めていきたい。休暇改革は、経済性の問題だけでなく、国民一人ひとりが明るく楽しく生きるためのもの」と締めくくった。