〈旬刊旅行新聞6月21日号コラム〉住宅宿泊事業法施行 違法を取り締まり、健全な発展を
2018年6月21日(木)配信
6月15日に住宅宿泊事業法(民泊法)が施行された。観光業界にとっては、大きな転換点となる。併せて改正旅館業法も施行され、立入調査権や罰則強化、規制緩和も盛り込まれた。これにより、①一定のルール化での民泊合法化(新規参入の促進)②ルールの実効性確保(違法民泊の排除)③宿泊業におけるイコールフッティング(公平性)の確保――に向けて本格的に動き出した。
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同日には、東京・永田町の都道府県会館で「住宅宿泊事業法施行を祝う会」が開かれた。
衆議院議員で元地方創生大臣の石破茂氏は「航空券と民泊サービスを組み合わせるようなさまざまな連携が必要」との考えを示した。一方で「規制は必要だが、過度の規制はよくない。実際、自治体によってはまったく(民泊の)営業ができないところもある。対立ではなく共存共栄を考えるべき」と語った。
観光庁の水嶋智次長は「(新法は)国内外の旅行者が安心して利用できる民泊サービスを、しっかりと普及拡大していくための法律。円滑な届け出を促進していき、民泊の好事例を見つけて紹介したい」と話した。
一方、全国賃貸管理ビジネス協会の髙橋誠一会長は、自治体の条例による規制が強化されている現状について「(犯罪やトラブルなどへの)予防ばかりに目が向いていて、営業日数上限60日など規制の仕方がおかしい。国から地方行政にしっかりと指導してほしい」と訴えた。
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世界的な民泊仲介業者「エアビーアンドビー」共同創設者のネイサン・ブレチャージク氏は6月14日、「明確で公平なルールの順守や、地域に根差してコミュニティーを活性化していく」など日本での事業の原則を発表。同社は新法施行日以降、違法となる民泊物件の予約取り消しと返金を行うなど、遵法精神の姿勢を広くアピールした。
民泊予約サイト「STAY JAPAN」を運営する百戦錬磨の上山康博社長は「違法民泊が淘汰され、長年の念願であった新たな市場が形成される区切りの日となることを大変喜ばしく思う」とし、今後「日本全国の民泊・農泊施設の拡大を目指し、都市部から地方まで地域に貢献する新たなビジネスモデル構築を各地域の方々とともに進めていく」とコメントした。
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6月8日時点で観光庁が把握している住宅宿泊事業の届出の提出は2707件(うち受理済みは1134件)、住宅宿泊管理業の登録の申請は817件(うち登録済みは632件)、住宅宿泊仲介業の登録申請は46件(うち登録済み10件)と低調である。規制が厳しいことで、「旅館業法上の簡易宿所の許可や、特区の認定の件数が増加している傾向もある」(観光庁)という。
健全な民泊サービスの普及に向け、法が整備されたことは喜ぶべきことである。「地方自治体の上乗せ条例が厳しすぎる」という意見もある。しかし、これまでの違法民泊の横行により、多くのトラブルが発生し、地域住民に不安を与えていたことは事実だ。民泊へのイメージは極端に悪化している。このことを考えると、厳しく引き締めた今回の措置は正しい判断だと思う。新法には定期的な見直し規定もある。違法民泊を厳しく取り締まりながら、多様化する旅のスタイルに対応できる“日本の旅を豊かに演出する民泊”が健全に育っていくことを願っている。
(編集長・増田 剛)