町の人の目に触れる結婚式を「第7回ふるさとウェディングコンクール」
2018年6月29日(金) 配信
近年、結婚式のかたちが多様化している。
従来の伝統や型にはまらない式が増えるなか、地域の子供たちが結婚装束の新郎新婦を見る機会が減少したと桂由美氏は警鐘を鳴らす。「1960年代くらいまでは、自宅で花嫁支度を整え、家から出発。会場までの道を、近所の人に祝福されながら移動した。今はホテルや式場での結婚式が主流で、町で花嫁姿を目にすることがほとんどなくなった」(桂氏)。
「地域の子供たちに、結婚式に夢と希望を抱いてほしい」という桂氏の想いに、総務省と観光庁が後援。「ふるさとウェディングコンクール」が始まった。町の人の目に触れる新しい結婚式を募集し、表彰を行っている。
審査ポイントは①市民参加型結婚式であること、そのための工夫点②地域の良さと、新郎新婦の個性を生かした唯一無二の結婚式であること③単に伝統を再現した結婚式ではなく、新しいアイデア・感覚が盛り込まれた作品であること――。
7回目となる今年の総務大臣賞には、「藍染大通りストリートウェディング」が選ばれた。東京都からは初めてのグランプリとなる。観光庁長官賞は「日本百名山「月山」の麓で誓う家族の幸せ~にしかわ七夕ウェディング~」となった。6月19日(火)に東京都内で表彰式が開かれ、受賞者2組がプレゼンテーションを行った。
□総務大臣賞 「藍染大通りストリートウェディング」
藍染町は、住民でない人も積極的に町内会に迎え入れており、若い人材の確保に努めている。就職を機に東京の下町・根津に移り住んだ新郎の上田一樹さんは、根津の祭りや行事などの町会活動に参加していた。地元の人と親しくなるにつれて、短い年月でもその地に愛着を感じるようになった。
「地域住民の交流の場として親しまれてきた『藍染大通り』の路上で結婚式を挙げてみては」。新婦との結婚が決まり、町内会長とのお酒の席で出たアイデアが満を持して実現した。
根津神社で親族と神前式を行ったあと、提灯の先導で境内をそぞろ歩き、人力車に乗って藍染大通りまで移動。純白のヴァージンロードや黄白の風船で飾り付けられた道には参加者が並んだ。シャボン玉のキットが配布され、退場の際にバブルシャワーで送り出す演出で参加者との一体感を高めた。
「誰でも参加できる結婚式」というコンセプトを実現するため、多くの観光客でにぎわう「根津・千駄木下町まつり」のイベントとして実施した。スタッフは祭りのはんてんを着て、町をアピール。通りすがりの人が参加しやすいよう、1千円の会費で飲食や人力車体験、子供向けワークショップなどを楽しめるようにした。
見ず知らずの人も一緒に偶然の出会いを祝福し、オープンで活気のある地域のようすを見てもらうことで、さらに仲間を呼び込むきっかけとなることを目指した。現在新郎新婦は根津で子育て中だという。
□観光庁長官賞 「日本百名山『月山』の麓で誓う家族の幸せ~にしかわ七夕ウェディング~」
夫婦が暮らす山形県西川町の総人口は減少傾向にあり、2040年には1980年比で64%の減少予測が立てられている。全国の地域で過疎化が深刻化するなか、結婚式の力で地域に暮らす魅力を山形から全国に発信したいと、山形ウェディング協議会が同コンクールにエントリーした。
山形ウェディング協議会は、何らかの理由で結婚式を挙げられなかった人たちのために、「夢婚」として結婚式をプレゼントしている。
夫婦は入籍から10年間。4人の子供たちと共に、にぎやかな毎日を送っていた。しかし、新郎の阿部道雄さんにはひとつ心残りがあった。「結婚式を挙げていない」。
両家でお披露目会は行ったが、結婚式を挙げる余裕がなく、結婚指輪も渡さないままだった。
結婚式を改めて挙げたいと思うようになったタイミングで、山形ウェディング協議会が結婚式をトータルサポートする「夢婚」が目にとまった。妻にも喜んでもらえたらと応募し、当選した。
挙式は新郎が2017年3月まで勤務していた「弓張平公園オートキャンプ場」の芝生スペースに、1日限りの式場を特設して行った。披露宴は新郎が現在勤務する「道の駅にしかわ月山銘水館」で開いた。隣町の道の駅が休という状況に追い込まれているなか、道の駅の新たな活用方法として、県内で注目を集めた。
地元の作家が結婚式の主旨に共感し、月山和紙の装飾、山形ふるさと工芸品の月山瑪瑙などを無料で提供。地のワインや町の特産品を料理に使い、地域性を演出した。
「今は結婚式をしない方が増えているが、結婚式は新しい家族が誕生する人生の節目。今後も『夢婚』を通して、結婚式の素晴らしさを伝えていきたい」。山形ウエディング協議会は、「要望があれば、各市町村でもその土地ならではの結婚式を提案したい」と今後の展望を語った。