〈この人に聞く〉重山こずえさん、「アート工房KOZUE」化粧まわし職人
2018年7月4日(水) 配信
鹿児島と沖縄の間に浮かぶ南の島・奄美大島では、秋になると集落ごとに「豊年祭」が開かれる。1年間の五穀豊穣を祈る、島の人々に脈々と受け継がれてきた行事だ。祭りのメインイベントは、1歳前後の男児の“土俵入り”。相手は地元の力士に頼むのが主流だが、父親や祖父の場合もある。男児が生まれて初めて使用する「化粧まわし」は家族にとって特別な記念品となる。
島最南端の港町、瀬戸内町古仁屋に化粧まわしを完全オーダーメイドで作る1人の女性がいる。重山こずえさんは自宅に「アート工房KOZUE」を構え、デザインから制作、販売までのすべてを手掛ける。
東京のデザイン学校、美容学校を経てヘアイラストレーターとして活躍した。42歳のときに奄美で化粧まわしの原案イラストを描くアルバイトを始め、翌年に独立。51歳で工房を立ち上げ、今年7月で10年目に入る。気さくで明るく、「細かいものでも、お客様の希望はできる限り叶えたい」。顧客はリピーターや紹介が多いが、町外からの依頼も増えてきた。
重山さんは、古仁屋とかけて5月28日を「コニヤの日」と命名。毎年本土でPR活動を行っている。
今年は、相撲にちなんで東京・両国駅前に立った。大島紬を着て、自身で作った工房と町の観光パンフレットを通行人に配布するという、一見地道な試み。「これならすぐに捨てないでしょう」と、大島紬で織った髪留めを一緒に包んだ。
とくに外国人が紬姿に足をとめる。「次は英語版を作らなくてはね」。遠く離れた大都会東京で、一人ひとりに声を掛ける。
【井坂 和香】