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避難所で民謡慰問、あさひ国際旅行が協力

2011年8月1日
編集部
楢葉町長と松本さん家元を囲んで
楢葉町長と松本さん家元を囲んで

 65年の歴史を持つ民謡団体「ミカド天風総連合会」は7月3―4日に、旅行会社「あさひ国際旅行」の協力のもと、東京電力福島第一原子力発電所から半径20㌔圏内警戒区域に設定され避難した、福島県双葉郡楢葉町の避難所を民謡演奏の慰問に訪れた。多くの歌手や有名人が避難所を訪れるなか、「避難所で一番不自由な思いをしている高齢の方が聞きたい歌や音楽は届いていない」と発案。ミカド天風総連合会が福島へ向かうのに同行した。
【伊集院 悟】

◇   ◇

 今回の企画の発案者である松本正好さんは、福島県双葉郡楢葉町の出身。町のほとんどの地域が福島第一原発から半径20キロ圏内警戒区域に設定され、多くの人が避難している故郷のために何かできないかと思い、小学校の同級生である楢葉長議会の山内佐内副議長に連絡した。多くの歌手や有名人が避難所を訪れる姿がTVで流れるが、「避難所で一番不自由な思いをしている高齢の方が聞きたいのはやはり民謡」(松本さん)と、懇意にしている民謡団体ミカド天風総連合会に依頼した。また、ミカド天風総連合会の定期演奏旅行を請け持っているあさひ国際旅行が慰問企画に賛同し、バスの無料手配を買って出た。

花笠音頭を皆で
花笠音頭を皆で

 家元のミカド天風さんは音合わせをする行きのバス車内で、「普段の演奏とは違うので難しい部分はあるけれど、私達が暗い気持ちでいてはダメ。今回の機会に感謝し、皆様に少しでも楽しんでいただかなくては」と意気込みを語った。

 1日目は福島県いわき市にある「かんぽの宿いわき」、2日目は福島県会津美里町にある「農村環境改善センター」を慰問。2日合わせて総勢300人ほどの被災者が集まった。

 あいさつに立ったミカド天風さんは「1人の力では何もできないけど、今回縁がつながり、こうして皆様の前で演奏ができることとなった。このひとときだけでもお祭り気分を味わってください」と語りかけた。松本さんは「皆さんストレスが溜まっていると思うので、今日は大きい声で唄って踊って楽しんでください」と話した。

 「ちゃっきり節」や福島民謡の「相馬節」「会津磐梯山」など15曲ほどを披露。篠笛による「夏は来ぬ」「茶摘み」「アメージンググレイス」「ふるさと」の独演では、皆が口ずさみ、会場全体で大合唱となった。花笠音頭では「体操がてら」と皆で簡単な振り付けをし、相馬盆歌では皆で輪になり唄い踊った。最後には飛び入りも受け付け、楢葉町、美里町からそれぞれ一人ずつ唄を披露した。

演奏後の熱い握手
演奏後の熱い握手

 演奏後、会場にいた80代の女性は、「私たちはTVで流れる音楽などはもう全然わからない。子供のころから慣れ親しんだ民謡を聞けて、本当にうれしかった」と話し、同世代の友人は「私も昔民謡をやっていたので、足が悪くなければ一緒に踊った。避難所では、厳しい現実をいろいろと考えてしまうが、今日は何も考えずに民謡で楽しめたので本当にありがたい」と涙した。

 今回の慰問に際し、ミカド天風総連合会から、義援金20万円、雑巾300枚、巾着70枚、シーツ300枚、どら焼き200個など、バスを提供したあさひ国際旅行からは手動式の懐中電灯200個が支援物資として楢葉町の草野考町長に手渡された。

 ミカド天風総連合会は、65年の歴史を持ち、初代が画期的な「民謡五線譜」を考案。民謡の普及と向上に尽くす。現在は二代目。民謡以外にも端唄・小唄・俗曲の芸域を持ち、映画、ドラマ、CM、審査員や講義など多方面で活躍している。

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