No.288 観光と防災 - 津波災害の問題点を検証
観光と防災
津波災害の問題点を検証
東日本大震災発生から約6カ月。今回の大災害は、地震そのものよりも、その後に押し寄せた巨大津波による被災が大きかった。9月1日の「防災の日」に合わせ、気象と防災の専門家である気象情報システム代表取締役の高津敏氏に、今回の甚大な津波被害をさまざまな角度から検証してもらった。過去の津波災害が教訓となっていなかった点、防災情報の伝達方法の問題点などを指摘。さらに、防災意識を持つことで防げる災害や、今後のまちづくりのヒントなどを聞いた。
【増田 剛】
「命を救う」一点に集中
助かったのはたまたまではない
3月11日、午後2時46分ごろ、宮城県沖を震源にマグニチュード9・0の地震が発生した。この地震は、現存している人にとって最大級の地震だった。
通常、気象庁は震源地や震度などが確定(発生から3―4分後)したのち地震情報を発信するのだが、3・11の地震では気象庁は地震情報が確定する前の、発生から約3分後に岩手3メートル、宮城6メートル、福島3メートルの大津波があると第1報の大津波警報を出していた。
高津敏氏
気象庁はその第1報から「ただちに避難してください。大きな津波は第一波ではなく、あとから来ることがあります」と繰り返し警戒を呼び掛けた。ところがその後、「午後2時59分に大船渡で20センチ」「午後3時1分に釜石沖で30センチ」など、気象庁が随時発表する細かな観測数値データが、メディアを通じてそのまま流れた。
そうすると、「なんだ、20―30センチの津波じゃないか。いつもの大したことのない津波かもしれない」と認識された面も否定できない。一度避難したにも関わらず、また高台から戻って来た人もいる。避難の遅れや、誤った「安心感」を与えてしまい、被害を大きくした可能性も高い。気象庁の数値的な発表の仕方については、侃々諤々議論されており、今後の重要な課題となっている。
※ 詳細は本紙1432号または日経テレコン21でお読みいただけます。