東電の原発賠償基準「到底容認できない」(福島県旅組)
<なぜ福島が他県と同じ?>
<被災者受入の売上控除に>
東京電力は9月21日、企業や個人に対する福島第一原子力発電所事故の損害賠償基準を発表したが、最大の原発事故被災県である福島県の旅館業は、「到底容認できない」姿勢を示している。
観光業の風評被害では、福島(避難区域外の地域)、茨城、栃木、群馬の4県に事業所がある事業者を対象としている。4県以外の観光事業者は、3月11日以降5月末まで外国人観光客に関する解約についてのみ、一定の算定基準で賠償される。
今回の賠償基準について東電は「原発事故だけでなく、地震や津波の影響もある」との考えを示し、前年同期比の減収率のうち、2割を対象外とする基準を示した。
一例として、旅館の昨年の売上高が500万円あったが、今年は220万円まで落ち込んだ場合、減収率は56%。東電の基準ではこのうち20%が除外され、36%となる。賠償額算定の基礎となる額(売上高に一定の比率〈宿泊業は60%〉をかけて算出することも可能)を300万円とし、これに36%をかけると、賠償額は108万円となる。8月末までを賠償の対象期間とし、9月27日から受け付け、10月中旬から賠償額の支払いを開始する予定だ。9月以降については、3カ月ごとに支払うという。
東電の賠償基準を受けて、福島県旅館ホテル生活衛生同業組合の菅野豊理事長(磐梯熱海温泉・ホテル華の湯社長)は22日、本紙の取材に対し、「不満でいっぱいだ。原子力損害賠償紛争審査会で、旅館業を代表して『100%原子力損害によるキャンセル』と訴え、能見善久会長も認めていただいた。その後も東電とは何度も交渉したが、とくに福島県が他県と同じ基準に設定されたことは到底認められない」と強調。さらに、「福島県で1万8千人の被災者を受け入れてきた売上げが控除になっていないのもおかしい」と語り、今後は「同組合として団体交渉を続けていく」考えを示した。