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「提言!これからの日本観光」 「食」の観光

2018年7月15日(日) 配信

「食」の観光には、新しい人的交流の場が生まれる効果がある。(写真はイメージ)

観光庁は、「テーマ別観光」による地方誘客事業に取り組み、特定の観光資源を活用して地方へ観光客を誘致する事業を公募している。そして毎年対象事業を選定し、その事業展開の必要経費などを国から支援することになった。17年度には、「街道観光」など13件が選定された。18年度の選定テーマの中には、「ONSENガストロノミーツーリズム」がある。日本観光振興協会の説明によると「ガストロノミーツーリズム」とは、「その土地の気候風土が生んだ食材、習慣、歴史、伝統等によって育まれた『食』を楽しみ、その土地の文化に触れることを目的とした観光」とのことである。要するに各地で取り組んでいる「食」の観光のことにほかならない。今回、温泉でその土地の「食」を味わい、楽しみ、付加価値の高い幅広い観光により誘客する事業の展開と、その効果があらためて国に認知されたことに大きな意味があると思う。 

 「食」の観光はこれまでも各地で行われてきた。また観光はほとんどの場合、観光地での「食」が伴う。旅館、ホテルなどでの宿泊、土産物としても「食」に関わる行動が中心だ。しかし、従来のそれはどちらかといえば、観光行動に付帯するものであったと思う。「ガストロノミーツーリズム」では付帯する行動から脱皮して「食」そのものが主な観光目的―観光資源として位置付けられることを意味する。そして、「食」を通じて地域の歴史生活などを楽しみながら、また、味わいながら触れていくことが主な観光目的となる。

 「食」の観光の場合、提供者と観光客の間に自然な対話が「食」を介して進むことが多い。そこに新しい人的交流の場が生まれる効果がある。しかも、この食の観光客は常連―リピーター客となることが多く持続的観光につながる。人的交流、持続的観光がそこに期待できるところに「食」の観光が真の観光への道を拓く動機になる効果がある。今回の「ONSENガストロノミー」の選定を温泉のみでなく各地での幅広い「食」の観光展開の動機にしたい。

 留意すべきことは、これまでの「食」の観光で往々にして「食」に注目するあまり偏った観光になりがちだったことへの反省である。グルメコンクールで入選した「食」を求めて、多くの観光客が殺到したまちでのことである。「食」を味わうこと、土産にすることに集中し、そのまちの他の観光スポットなどに立ち寄らずにそのまま帰ってしまう観光客が目立ったという。これでは観光の幅は広がらない。偏った観光としないことが必要である。

 「食」は人間に不可欠などこにでもあるものだ。したがって、そこに観光への知恵と工夫を働かせ、適切な情報発信が行われればどこでもできる観光でもある。「ガストロノミー」という難しい英語ではなく、地域の味、「食」を観光資源とする新しい観光として「味の観光」などわかりやすい日本語でこの観光への呼び掛けをしていきたいものと思う

コラムニスト紹介

須田 寛

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

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