観光庁関係に110億円、復旧・復興枠は3.3億円
観光庁は9月30日、2012年度予算の概算要求をまとめた。観光庁関係の概算要求は、11年度予算(101億4800万円)に対し、1・08倍の109億9100万円を要求。「訪日外国人3000万人プログラム第1期」などの主要事業予算は前年度予算比1・05倍の106億5700万円。このうち「日本再生重点枠」として「Fly to Japan!事業」など4項目、計15億2千万円を新たに盛り込んだ。また、別枠扱いで設けられた上限を決めない東日本大震災からの「復旧・復興枠」では、3億3400万円を要求した。
【伊集院 悟】
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主要事業は(1)訪日外国人3000万人プログラム第1期(2)観光を核とした地域の再生・活性化(3)観光人材の育成(4)ワークライフバランスの実現に資する休暇改革の推進(5)観光統計の整備――の5本柱と、東日本大震災からの復旧・復興枠。
メインとなる「訪日外国人3000万人プログラム第1期」では、前年度予算比1・02倍の88億900万円を求めた。中核となる訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)は同0・84倍の50億8800万円を要求。これまでの事業の高度化をはかるため、重点15市場というくくりではなく、各市場の性格から「有望市場」「高成長市場」「再訪市場」「安定市場」「富裕層」と5つの市場に分類した。インド・ロシアが分類される有望市場では、急増する旅行者を早急に取り込めるよう、「足場固め」として基本商品のツアー造成を支援。中国・タイ・マレーシアなどの高成長市場は、急増中の中間層の取り込みをはかるため、旅行博出展や広告宣伝、ツアー造成支援など、大規模プロモーションで「全方位戦略」で売り込む。韓国・台湾・香港・シンガポールなどの新規訪日が一巡した再訪市場は、リピーターを促すため、地方を主とする多様な日本の魅力・商品の開発・発信に力を入れ、メディア招請や地方連携事業など「多商品戦略」で攻める。米国・カナダ・英国・ドイツ・フランス・豪州などの安定市場は、他国からのシェア獲得のため、訪日の魅力を深く詳しく発信し、旅行博出展やメディア招請に力を入れる。
また、来年度は「今後の成長が見込まれる市場」として、現行の重点15市場のほか、インドネシア・ベトナム・フィリピン・ブラジル・メキシコ・イタリア・スペイン・サウジアラビア・UAEの9カ国をあげ、まずは基礎固めとして、訪日ツアー造成など旅行会社への働き掛けをしていくという。このうち、サウジアラビアとUAEは富裕層市場として分類し、莫大な消費が期待できる層の確実な獲得を目指していく。
そのほか、日本政府観光局(JNTO)運営費交付金には前年度予算比0・97倍の19億1300万円を要求する。
「日本再生重点化枠」には、3項目を新規に追加。日中関係の次代を担う青少年間の国際相互理解の増進、中長期的な日中間双方向交流の拡大をはかるため、中国の青少年200人を日本へ招請する「日中国交正常化40周年記念青少年招請事業」に1億円、「国立京都国際会館の整備・運営に係るPFI事業手法調査」に8400万円、「Fly to Japan!事業」に11億8600万円を要求する。
「Fly to Japan!事業」は、震災支援への感謝の意を伝えるとともに訪日旅行を促進するために、全世界から1万人の外国人を日本へ招き、SNSなどを通じて全世界へ発信してもらう。
「観光を核とした地域の再生・活性化」分野では、同0・81倍の3億8100万円を要求する。このうち、さまざまな滞在型観光の取り組みを推進し、市場との窓口機能などを担う「観光地域づくりプラットフォーム」の形成を促進しつつ、着地型旅行商品の企画・販売、人材育成などを行う取り組みを支援する「観光地域づくりプラットフォーム支援事業」に、同0・91倍の2億4600万円。「広域観光促進調査事業」に同0・57倍の1億1600万円、今年度事業仕分けでカットされた「ユニバーサルツーリズム促進事業」に1900万円を求める。
観光地域づくりプラットフォームや中小観光事業者のマネジメントを担う中核的な人材など「観光人材の育成」では同0・69倍の1億5300万円を要求する。
昨年から取り組んできた「ワークライフバランスの実現に資する休暇改革の促進」には、1億8500万円を要求。このうち、昨年度から継続の「地域における家族の時間づくり促進事業」は、同0・43倍の3500万円と落ち込むが、「日本再生重点化枠」に盛り込んだ「国内旅行活性化のための環境整備事業」で1億5千万円を要求し、合計では前年予算比2・26倍となった。
今年度までは準備を進め、来年度に大規模な調査を予定する「観光統計の整備」費には、同1・78倍の8億4500万円を要求。調査は原則5年に1回とし、来年度が1回目となる。
12年度予算では、上限を設けない東日本大震災からの「復旧・復興枠」を設けたが、観光庁でも3億3400万円を要求。東北地方への旅行需要回復と新たな観光地づくりのモデル構築をはかる「広域連携観光復興対策事業」として2億5千万円を盛り込んだ。東北地方全体を観光の博覧会場と見立て、地域や民間のさまざまな取り組みを連携させるとともに統一的な情報を発信していく。国による全体事業としては、博覧会の事業全体を取りまとめる事務局を開設し、博覧会として統一感を持った効果的な情報発信や各ゾーン(地域)の運営状況をチェック。事務局の選定はこれから行うという。地域の取り組みによるゾーン事業では、東北地方に30カ所ほど設定された区域ゾーンで地域内の幅広い関係者の連携により、「地域観光案内人」の設置や各種参加型コンテンツの提供、モデルルートの提案、各種イベントの開催、ゾーン内の移動手段の確保、食事や土産など「地のもの」の活用を行う。
また、「災害時における訪日外国人旅行者に向けた情報提供のあり方に関する調査事業」に3千万円を要求。東日本大震災を踏まえ、訪日外国人旅行者が安心して旅行できるようにするため、自然災害など緊急時に外国人旅行者へ正確な情報を迅速に提供するための情報提供のあり方について調査検討を行う。