地熱発電問題を議論、初の県温泉協会連絡会議開く
<地熱は本当にクリーンエネルギーか?>
日本温泉協会(廣川允彦会長)は11月30日、東京都市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で、県温泉協会連絡会議を開いた。地熱発電問題への協会としての対応など、各県の温泉協会が横の連携を強め、情報を共有することが目的で初の試みとなる。
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廣川会長は冒頭、「全国に3170の温泉地があり、2万7800の源泉があるなかで、都道府県に温泉協会がある県は14県。このうち11県に集まっていただいた」とあいさつ。「近年、再生可能なエネルギーの導入という国の方針のなかで、地熱発電が脚光を浴びている。また、福島県の原発事故によって追い風が吹いている。しかし、地熱発電の周辺では、温泉源の影響の事例が多数報告されている。短期の観測では影響がなくても、長期的には影響があると考えるのが普通だと思っている。日本温泉協会は温泉資源保護の立場から、既存の温泉地周辺での無秩序な地熱開発に反対してきた。関係団体と協力しながら、温泉資源保護のために運動をさらに進めていきたい」と語った。
続いて環境省講演「地熱発電の導入促進に向けた国の動き」では、11月24日にまとめた「温泉資源保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」の素案が報告された。
ガイドラインでは、地熱開発と温泉事業が共存・共栄するためには、協議会などを設置することで、地熱開発に伴う温泉や噴気への影響に関する検証結果や、地熱発電の現状報告、将来計画などを説明・報告し合いながら、関係者間の合意形成をはかっていくことが重要としている。
環境省の大庭一夫自然環境局自然環境整備担当参事官は「環境省は再生可能エネルギーの一環として地熱開発を進めなければならないという立場であるが、無秩序な開発はいけないと感じている」と話した。これを受けて山形県温泉協会の堀是治会長は「環境省は温泉保護を第一に考えてほしい」と要望した。
熊本県温泉協会の松﨑郁洋会長は、温泉掘削の許可は都道府県知事に求めなければならないが、「知事に答申する審議会を通さないで地熱開発を進められると、手も足も出ない」と訴えた。
これに対して環境省は「ガイドラインでは、審議会を通さなければならない」という見解を示した。
地熱対策特別委員長を務める福島県温泉協会の佐藤好億会長は、「日本温泉協会は無秩序な地熱開発には一定のガイドラインが必要という立場をとってきた。無秩序とは人間環境に悪影響を及ぼすこと。地熱発電には蒸気として大量のCO2や硫化水素、ヒ素、水銀などを大気に放出する。また、吸い取った大量の熱水はヒ素などを含むため、一般河川に放流することができない。このため、還元井を作って地下水に戻さなければならない。これがやがて地下水に影響しないなんてありえない」と語り、「地熱は本当にクリーンエネルギーなのか?」と疑問を呈した。
さらに、「開発サイドにしか情報がない」現状を指摘し、第三者的な、客観性が担保された情報提供に加え、環境のモニタリングの徹底などを求めた。
岐阜県温泉協会の滝多賀男会長は「ほかに産業のない町で地熱開発によって温泉が出なくなってしまえば、その地域はみじめになる。そのあたりもしっかりと考えなければならない」と述べた。
森行成副会長は「地元の自治体が『地域経済主義』によって地熱発電を誘致した場合、我われ末端の温泉事業者は反対することができなくなる。地元の合意が絶対必要」と語った。
各温泉協会からは、地元の自治体に温泉の専門家がいないことへの危惧の声も多かった。