固定資産税減税へ、2015年の評価替えから
観光振興議員連盟(川内博史会長)は12月7日に総会を開き、旅館3団体が長年に渡り要望していたホテル・旅館の建物に係る固定資産評価(固定資産税)の見直しについて、2012年度税制改正要望の2次査定で最高ランクのA評価を受けたことを報告。実態調査の結果を踏まえ、早ければ2015年度評価替えの際に実施されることとなる。また、原発事故による観光業の風評被害についても議論。旅館3団体は連名で、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針による福島・茨城・栃木・群馬の4県に加え、北海道・青森・岩手・秋田・宮城・山形・新潟・千葉・埼玉・山梨・東京・神奈川・長野の13都道県を賠償対象に追加するよう要望した。観議連では賠償対象が拡大できるよう全力で取り組んでいくことを確認した。
【伊集院 悟】
<原発賠償に13都道県追加を>
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長)、日本観光旅館連盟(近兼孝休会長)、国際観光旅館連盟(佐藤義正会長)の3団体は、宿泊業は建物自体が商品である装置産業で、建物の改装・改築の頻度も多く膨大な経費を要することや、固定資産税が再建築費を算出根拠とし建築から何年経過してもその評価額が下がることなく税負担が不当に重いと、長年に渡り固定資産税の見直しについて要望してきた。
11年度税制改正要望では、2次査定で次年度以降の検討課題とするG判定となり、閣議決定された税制改正大綱でも検討事項に留まる結果となった。
一転、12年度税制改正要望では、1次査定で「要望内容の見直しを適切にできれば認められる」というB判定に留まったが、2次査定では「要望を認める」とのA判定を受け、固定資産税の見直しについてほぼ決まった。
川内会長はA判定の報告に際し「旅館団体からの要望が自民党政権下では長年無視されてきたが、観議連のメンバー全員の尽力でようやく成し遂げることができ、大変感謝している」と連盟のメンバーを称え、集まった旅館3団体に対し「皆さんの力で一緒に観光業界を盛り上げていきましょう」と語りかけた。
旅館団体を代表し、全旅連の佐藤会長は「全旅連創立以来、長年取り組んできた要望が、観議連ができた2年目で叶い、大変感謝している」と謝意を述べた。
また、観光庁の溝畑宏長官は「12月9日の税制改正要望で正式に発表できると思う。これは皆さんが長年にわたり体を張って尽力してきた結果。15年度評価替えで実施できるよう観光庁でもできる限りのバックアップをしていきたい」と力を込めた。
今後は、12月9日の税制改正大綱の正式発表を経て、15年度評価替えでの実施を目指す。
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同じく総会では、原発事故による観光業の風評被害についても議論。原子力損害賠償紛争審査会が8月5日に出した中間指針では、観光業の風評被害賠償が福島・茨城・栃木・群馬の4県に限定された。総会で旅館3団体は連名で、(1)4県に加え、北海道・青森・岩手・秋田・宮城・山形・新潟・千葉・埼玉・山梨・東京・神奈川・長野の13都道県の追加(2)3月11日以降の外国人観光客の予約控えも賠償対象へ追加(3)5月末までとされた賠償請求期間の延長の3点を要望。
国観連の佐藤会長は「原発事故以降、福島県より北に首都圏の人は全然来ないのに、賠償の対象にならないのはおかしい」と訴えた。また、現状を把握するため、北海道・宮城県・山形県・千葉県・山梨県・東京都の代表者が、各県の観光業の被害状況をデータをもとに細かく説明。「賠償対象の4県と被害状況は変わらないことをデータが示しているのに、賠償対象とならないのはおかしい」という声が噴出した。
川内会長は「8月5日の中間指針ではデータが出そろわないため定性的に判断をしたと思うが、10月に正式な政府統計も出て、各県のデータも出ているので、賠償対象の見直しは当然。データにもとづいて定量的に判断する、本来あるべき賠償の姿にするべきだ」と力を込めた。
総会に出席した文部科学省の原子力損害賠償対策室室長は噴出した意見に対し「風評被害が及んでいるのは4県だけという記述は中間指針にはない。あとは因果関係をどう立証していくかではないか」と弁明。川内会長は「4県以外にも風評被害があることは認めているのだから、しっかりと対応してほしい。観議連で強く働きかけていきたい」と決意を述べた。