安全運航は大前提、低価格と質で他社と差別化
3月の運航開始を控え、国内初の本格的LCC・Peach Aviation(井上慎一CEO)は11年12月21日、首都圏の報道関係者を集めて、会社概要やビジネスモデルなどを紹介する説明会を開いた。井上CEOは、安全運航を大前提とし、そこにLCCの強みである低価格運賃と日本企業ならではの「質」を加え、他社との差別化をはかりたいと強調した。
同社の経営ビジョンは「日本とアジアの架け橋に」。そのうえで、顧客との約束として「安全なフライト」「低価格航空運賃」「Japanクオリティ」の3つを掲げる。安全面については安全推進委員会を設置して社員への啓蒙活動に注力。全日本空輸(ANA)から有償で安全のノウハウを提供してもらうほか、2年間で導入予定のエアバスA320―200(180席)10機は、すべて新しい機材を用意する。整備は自社で行い、朝、拠点の関西国際空港(KIX)を飛び立った機は、すべてその日のうちにKIXに戻る。
出資者と出資比率の内訳は、ANAが39%、産業革新機構が28%、香港のベンチャーキャピタル・First Eastern Investment Groupが外資枠限度の33%。総出資額は150億円。海外企業の出資を受けたことについて「アジアからのインバウンド客も、国内客と同じ比重で考えているため、香港の投資家をパートナーに迎えることで、我われのビジネスに付加価値を付けることができる」と説明した。また、ANAからの独立経営を担保するため、ANAの出資は39%に抑えて連結決算対象外とした。
運賃体系方針については「プロモーション価格ではなく、365日の低運賃を実現する」と強調。基本はアラカルト型で、付帯サービスは必要に応じて利用者が加えていく形。例えば、受託手荷物は1個1050円。座席指定はすべて有料で210円の指定料がかかる。購入方法についてもインターネット予約は無料だが、コンタクトセンターは1050円、空港カウンターは2100円が加算される。基本運賃は大阪(KIX)―福岡が片道3780円―1万1780円など幅があるが、これは空席連動型のため。「株価のように都度の運賃が空席状況によって上下する」。予約の保留は受け付けないほか、団体運賃の設定はない。
団体設定はないが、旅行会社との関係について井上CEOは「流通チャネルとして旅行会社を排除することはない」と言及。「ネット販売で8割を考えているので、そのほかをお願いすることも考えている。ただ、コストのかかるお付き合いはしない」と語った。
今後の路線計画については、KIXから4時間以内の地点であれば、国内外問わず、検討対象。「この範囲内で受益性の高いところを検討したい」と意気込んだ。なお、現在発表しているのは3月1日からKIX―福岡(1日4便)、KIX―千歳(1日3便)、KIX―ソウル・仁川(週7便)。