震災後、若年層に動き、12年の訪日客790万人を予想
2011年12月19日に開かれた財団法人日本交通公社主催の「第21回旅行動向シンポジウム」で、主任研究員の黒須宏志氏が旅行マーケットの最新動向と2012年の展望について講演を行った。12年の海外旅行者数は前年比2・7%増の1740万人、訪日外客数は同26・5%増の790万人、国内の観光性の旅行者数は同2―3%増と予測した。
2011年は震災の影響を受けつつも、国内宿泊旅行のボリューム推移をみると、統計の取れた4―9月中、6―8月で前年を上回るなど、「旅行需要は増えている」と総括。過去1年間の宿泊旅行参加率は10年12月調査の64%に対し、11年11月調査で71%と増加。過去1年間の宿泊旅行回数では10年12月調査の2・5回から、11年11月調査の2・7回と微増した。
海外旅行をみると、9・11やSARS、リーマンショックなどと比べると、東日本大震災の影響は少なく、「むしろプラスに推移している」とした。また、昨今進む予約のオンライン化が2011年は加速しているという。予約チャンネルの変化では近年、宿泊施設への電話などは減少し、旅行会社のホームページが加速度的に増加。旅行会社の店頭や電話、宿泊施設のWebサイトは横ばいとなっている。
近年いわれる若年層の旅行離れについては、震災後の変化をあげ新しい動きを紹介。震災後6カ月の出国率をみると、20代と30代前半で高い伸びを示し、「若年層は、お金がないが、旅行のモチベーション自体は高い」と語った。一方、リーマンショック後のトレンドであったシニア層はマイナスで推移した。また、アンケート結果から若年層の意識の変化がみられ、「自分磨き」など旅行の意味の変化を指摘。2012年も、一過性の消費から「蓄積」になるような消費に興味が移り、旅行を「自分の経験を積み増していくような営み」として再発見しようとする動きが出てくると予想した。
2012年の海外旅行者数は前年比2・7%増の1740万と予測。燃油サーチャー高騰の影響で近場優位の傾向、欧州ではFITシフトの継続の見通し。
国内旅行は観光性の旅行者数は前年比2―3%増と予測。「実質重視」のマインドが強まり消費単価は下落傾向になるという。そのほか、出発2―3日以内の間際予約、出発2週間以内のオンライン予約が増加する傾向にあり、宿を選ぶ基準では「リピーターだから」という理由が増加傾向にあるという。
訪日外客数は前年比26・5%増の790万人と予測。11年に比べ飛躍的に回復するも、震災前の水準までの回復は難しいという。