言語・文化・制度が壁、低リスクな医療観光を
海外からの医療ツーリズムや訪日外国人の医療サービスの現状と課題など探る「国際医療サービスシンポジウム」が2月9日、関西地区の医療関係者や旅行会社の担当者などが参加して、大阪市内のホテルで開かれた。
日本政策投資銀行によると、医療ツーリズムは現在、世界約50カ国で実施され、2008年の医療ツーリスト数は年間600万人程度と推計。このうち半数の300万人(07年)をアジアで受け入れている。全体の市場規模は12年に1千億ドルまで拡大することが見込まれている。
シンポジウムでは4人の医療専門家が登場し、それぞれの立場から問題点や課題、対策など提起して参加者と意見交換。また、医療通訳者が医療現場と通訳の役割、中国人医療専門家は海外から見た日本の医療について考えを述べた。
このなかで、関西医科大学の西山利正教授は、日本独特の医療保険や日本の出来高払いと外国医療のデポジットの違い、文化、常識、言語、法律などの違いから起こる医療訴訟などを訪日外国人と医療の問題として指摘。
対策として専門のトラベルクリニックの充実やトラベルファーマシー(専門薬局)、医療通訳の配置などを提案。とくに相手国の文化で説明できる医療通訳の必要性を訴えた。
さらに健康増進などを目的にしたヘルスツーリズムと検診や美容、薬局での薬、化粧品購入などのメディカルツーリズムの定義について説明。そのうえで「高度先進医療は利益を期待できない。メスを用いない審美領域など低リスク、低コストの医療推進が現実的」と結論付けた。
また、大阪医師会の高井康之理事は「営利目的で診療すると、日本人が医療から締め出される」とツーリズム推進の危険性を指摘した。