箱根の移動に楽しさ・くつろぎを 100億円の大規模投資(小田急箱根グループ)
2018年8月1日(水) 配信
小田急箱根グループ(小田急箱根ホールディングス、五十嵐秀社長)が、箱根エリアにて総額100億円規模の大型投資に取り掛かることが分かった。箱根エリアの移動を担うインフラ事業のなかに、楽しさやくつろぎのエッセンスを加えることで、来訪者数の底上げを狙う。
芦ノ湖を巡る新型海賊船や、スイス製ゴンドラを投入するなど、目玉コンテンツの強化が中心。登山鉄道とロープウェイを結ぶ早雲山駅舎のリニューアルも行う。
8月1日(水)、東京都内で行われた会見に出席した五十嵐社長は、「大型投資を着実に遂行し、箱根フリーパスの年間発売枚数100万枚の早期達成を目指す」と意気込んだ。17年の箱根フリーパスの販売枚数は95万枚。移動時のコンテンツ力を強めることで、目標を達成できるとみる。
同グループは、箱根湯本を起点に観光客の移動を司ってきた。登山電車からケーブルカー、ロープウェイと乗り継ぎ、箱根海賊船で芦ノ湖を遊覧。下船後は登山バスで帰路にというゴールデンコースが長い間支持を集めていた。
総額100億円に及ぶ今回の投資では、人気のゴールデンコースの要所々々を補強。主要ターゲットである国内外の個人旅行者の満足度を上げることで、箱根エリアのさらなる活性を目指す。宿泊施設や土産物屋など、各観光スポットをつなぐインフラとしての役割を果たしつつ、移動時の楽しみも積極的に提案していく構え。
新型海賊船は、水戸岡鋭治氏がデザイン設計を担当した。水戸岡氏は、豪華観光列車「ななつ星in 九州」を筆頭に、観光列車ムーブメントの火付け役でもある。起用の経緯について、箱根観光船の岡本裕之社長は「ななつ星のインパクトが強かった。中世のイメージや居住空間の快適さを求めた結果、オファーに至った」と説明。木材を基調としてクラッシックな内装で、芦ノ湖遊覧の魅力を訴える。全長35㍍、541人を収容し、建造費は12・5億円。
小涌谷に掛かり、富士山を望む箱根ロープウェイでは、スイス・CWA社製のゴンドラ(TARIS)を新たに導入する。2人同時に乗降可能な広い開閉部が特徴で、定員は18人となる。営業開始は、2021年4月の見込み。早雲山駅~桃源台駅間、30分弱ほどと時間は短いが、箱根観光の目玉コンテンツであることは誰もが認めるところ。新たなゴンドラ(TARIS)によって、新規客・リピーターのさらなる取り込みを狙う。製造費は約16億円。
早雲山駅舎のリニューアルについては、「キャパシティを広げ、新しい楽しみ方を提案する」(五十嵐社長)とした。同駅舎は、ケーブルカーからロープウェイへの乗り換え場としての役割を担う。多様なニーズを受け止め、万が一の際にも柔軟に対応できるよう、バリアフリー化と救護室・授乳室の設置を行う。相模湾を一望するテラスと、足湯スペースも用意する予定だ。10月に着工し、2020年春に営業を開始する。