洋画ロケを誘致し、地方のインバウンド需要を創出
2018年8月6日(月)配信
「ロケツーリズム」を通じ、地方に多くの人が訪れている。7月25日にはロケツーリズム協議会(藤崎慎一会長)が東京都内で第10回の会合を開き、自治体や企業関係者150人以上が参加し、ロケ誘致から活用までのノウハウを共有した。会では、次の段階として海外作品のロケを誘致し、地方のインバウンド需要創出に向け、「目指せ!ハリウッド映画誘致!」を提言。参加した首長らからは、国の施策として一丸なってロケツーリズムを展開することや、観光庁主導の支援制度の設計を求める声も上がった。
同協議会では、初めて、「市町村トップ会談」が開かれ、5人の首長と制作関係者、自治体関係者が意見交換を実施した。広島県呉市の新原芳明市長は制作者側に「ロケ受け入れを反対する首長はいない」と受入側の姿勢を明らかにした。ロケ誘致に欠かせない地元住民との協力については長野県千曲市の岡田昭雄市長が、「地域の人がロケに関われる地域映画から始めれば、ノウハウも蓄積できる」と持論を展開。岐阜県飛騨市の都竹淳也市長は「ロケ誘致に積極的な全国の首長で勉強会などを行うのも一つの手。担当者も一緒に参加するようにすれば、行政内の意思統一もはかれる」と提案した。
ロケ誘致は経済効果以外の恩恵も得られる。岩手県久慈市の遠藤譲一市長は「市では、住民が自信を持ってまちのことを語るようになった」と変化を紹介。千葉県いすみ市の太田洋市長は「取り組みを始めてから移住者が増え、税収も増えた」と報告した。
松竹芸能の小林敬宣取締役は、「ロケツーリズムは作品を長く親しんでもらうきっかけになり、名作を生む要素にもなる。風化させないことが重要になる」と制作者側の考えを示した。
藤崎会長は「初のトップ会談でいい手ごたえが得られた。次は人数を増やし、提言の実現に向け、各自治体がどこまでできるのかを世界に向けて発信したい」と振り返った。
□間接経済効果6億円 3年目は人材を育成
ロケツーリズム協議会は観光庁の「テーマ別観光による地域誘客事業」に選定されている。17年度は、全国の自治体や企業の協力のもと効果検証を実施。問い合わせは全国30地域で4193件あり、1077件の撮影が決定した。直接経済効果(ロケ隊の地域での消費額)は全国11地域で、8122万円、間接経済効果(地域を訪れた人の消費額)は3地域で6億1千万円にのぼった。企業への問い合わせは、5施設で2792件あり、806件の撮影が決定した。直接経済効果は1億3千万円となった。
誘客事業3年目は、ロケナビゲーターなどの「人材育成」に注力する。元TBS編成局メディアライツ推進部の田中康之氏は、TBSと神奈川県横浜市が包括連携協定結んだことを例に、「制作会社やテレビ局と地域の連携も強まってきているからこそ、彼らの要望に応えられる人材の育成が必要」と理由を述べた。