日本の農村の原風景、砺波平野の「散居村(さんきょそん)」
富山県の砺波市は6月3、4日の2日間、メディア招聘事業を実施した。3年後の2015年春に北陸新幹線の開業を控え、首都圏からの誘客拡大に向け、通年型の観光地を目指している。砺波市といえば、「チューリップのまち」として知名度が高いが、屋敷林に囲まれた家々が点在する「散居村」(さんきょそん)の景色は、日本の農村の原風景。庄川峡湖上遊覧クルーズなどと組み合わせた観光がゆったりのんびりとでき、お薦めだ。
【増田 剛】
◇
<散居村>
富山県の西部に位置する砺波平野は、庄川と小矢部川がつくった約220平方㌔の広さを持つ扇状型の平野。そこに、屋敷林に囲まれた約1万戸の農家が点在して散居村(散村)の景観をつくっている。
それぞれの農家が、自分の家のまわりの農地を耕作して稲作を行ってきた歴史があり、その家々の大きな特徴は、家のまわりに杉や欅、竹などの屋敷林をめぐらせてきたことだ。
屋敷林は冬の冷たい季節風や吹雪、春先の強い南風から家を守ってきた。また、杉の落ち葉や枝木などは、日々の炊事や風呂炊きの燃料として大切に利用されてきたという。
散居村の農家の人々は、家の周りで米や野菜を育て、日常生活に必要な資材を屋敷林から調達する「自給自足」に近い生活を行ってきた文化の面影を今も濃く残している。
散居村の農家の広い屋敷の母屋は、季節風の強い西南側とは反対の東を向いて建てられており、「アズマダチ」と呼ばれている。なかでも入道家はその代表的な存在。家の間取りは、広間を中心として、座敷・茶の間・寝室・台所などを配置した広間型。座敷には大きな仏壇が置かれ、その規模が家の格式を表していた。冠婚葬祭や仏事などが行われるときには、座敷と広間の戸を外して多くの人が集まれるようにした。アズマダチが生まれたのは、金沢の武家住宅への憧れもあったという。
標高約430メートルの散居村展望台や展望広場からは、四季それぞれに美しい景色を見せる散居村を一望することができる。また、となみ散居村ミュージアムでは、「アズマダチ」を復元した伝統館、情報館、交流館、民具館などがあり、貴重な資料もそろい歴史を学ぶことができる。
<庄川峡遊覧クルーズ>
庄川の小牧ダム周辺の船着場から、上流の大牧温泉まで、遊覧船が運航されている。大牧温泉は船でしか行けない秘境の温泉宿として知られる。片道大人1400円、子供700円。小牧ダムを中心とする庄川峡は、県定公園にも指定されており、春には桜、夏には新緑、秋には紅葉、冬には絶景の雪景色を楽しめる。25分間の短時間遊覧コース(大人1千円、子供500円)も設定している。
近くの庄川郷温泉には、赤茶色の「炭酸鉄泉」と、白濁色の「炭酸水素鉛泉」の2種類の個性的な濁り湯がある「鳥越の宿 三楽園」などで、静かにのんびりゆったりとくつろぎたい。
また、庄川の名物は小ぶりの鮎だ。庄川沿いの川金庭園内にある超人気店の「いろり茶屋 鮎の庄」で食べられる。
問い合わせ=電話:0120(01)0257。
<砺波のチューリップ>
砺波市といえば、チューリップが有名。毎年ゴールデンウイーク時期に「となみチューリップフェア」を開催し、61回目の今年も期間中約30万人が訪れる一大イベントに成長した。チューリップ四季彩館は、15度前後に温度調整され、いつ訪れてもチューリップに出会える世界唯一の場所。
問い合わせ=電話:0763(33)7716。