「津田令子のにっぽん風土記(40)」短期間でも「精咀嚼」ができる旅を~歯科医の旅編 ~
2018年8月18日(土)配信
関端徹さんは、さいたま市浦和区に住み、医院を構える歯科医師だ。東京都北区出身で、大学時代は盛岡で過ごす。その後、叔父の知り合いに誘われ、浦和でセキハタ歯科医院を開業して以来、浦和に住む。「住みやすい街です。教育環境もいいし、交通の便も良く、東京に20―30分で行けます。自然も比較的多いし、物価も安い。おいしい飲食店もたくさんあります」。
多忙な毎日のなか最大の息抜きは旅だ。友人とのゴルフ旅は、春には宮古島、夏には北海道、冬には宮崎と決めており、あと1回は梅雨前線の動きによって毎年少しずつ違う。
宮古島ではゴルフをしながら花や鳥、海の景色を見るのも目的。「自然にとっぷりと浸かることが大好きなんです。マリンブルーの海があり、ハイビスカス、デイゴ、ブーゲンビリア、アラマンダなどが咲き誇っています。ヤンバルクイナに出くわすことも」。ゴルフの後は車で近隣の島を回ったり、スーパーに買い出しにも行く。ただし、忙しい関端さんの旅は1泊2日。朝6時台の飛行機で向かい、帰りは夜8時台の便。2日間をフル活用する。「飛行機での発着時はタイトですが、旅先では時がゆっくり流れます」。
12月に行く宮崎は伊勢エビをはじめとした魚介類、宮崎牛や、日向夏などの果物がおいしく、気候も穏やかだ。夏の北海道は新千歳空港から車で20分ほどのニドムクラシックで、エゾシカやキタキツネとの遭遇を楽しみにしている。
また、認定医として3つの学会に属しているため、総会や学術講演会でさまざまな都市を訪れる。都内の街歩きにも参加している。今年、独特の風土や無形のおもてなしなどユニークな観光資源を認定しているNPO法人ふるさとオンリーワンのまちに入会した。
関端さんは歯科医ならではの話をしてくださった。
「歯科治療の最終目標は、いつでもおいしく食べられる『精咀嚼』ができる状態であること。咀嚼には『かみ砕く』と『唾液と混ぜる』の2つがある」と話す。「味わうことを主体とすると、食べ物の旨みを感じられます。舌を意識的に動かすと唾液が多量に出てきます。これを舌と頬と歯を使って、何回も食べ物と混ぜる咀嚼をすると、舌の味細胞にキャッチされて脳に美味しさを伝えてくれる。これが精咀嚼で、旅と似ています。短期間でも雰囲気をじっくりと味わう旅は、心身ともにほっとします。これが、精咀嚼ができた旅と言えるのではないでしょうか」。
コラムニスト紹介
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。