地熱対策活動費を、一般社団化へ新役員選出
日本温泉協会(廣川允彦会長、1492会員)は6月26日、長崎県・雲仙温泉の九州ホテルで2012年度会員総会を開き、13年4月1日から移行する一般社団法人化に向けて新役員を選任したほか、会員提出議題として、自然保護・温泉源保護・温泉文化保護の見地から「無秩序な地熱発電開発に反対」する決議を承認した。
廣川会長は冒頭、「日本温泉協会の喫緊の問題は地熱発電。地熱発電周辺の温泉地の方々から、温泉が枯渇したり、泉質が変わったり、地震が起こったりというさまざまな報告があった。このことを全国の温泉関係者に知ってもらうために、昨年度は2回、都道府県の温泉協会に呼び掛け、連絡協議会を開いた」とし、「協会としては、地熱発電に反対する地域と一緒になって活動を応援していきたい」と語った。さらに「協会ホームページ『温泉名人』を会員に役立てるために、i.JTBの国内旅行予約『るるぶトラベル』と連携して、7月中旬までに予約サイトとして稼働させたい」と述べた。手数料(システム利用料)は8%で、内訳はJTBが6%、日本温泉協会が2%と設定している。
来賓の環境省自然環境局の大庭一夫自然環境整備担当参事官は「環境省はエネルギーのセキュリティの観点から、分散型、地産地消型に取り組んでいる。一つは温泉熱を利用するヒートポンプ、もう一つは温泉付随ガスを利用したコージェネレーションについて09年度から補助事業を行っており、現在30件以上の実績が上がっている。また、温泉発電については新たに掘削するのではなく、すでに流出している既存の温泉熱を発電に利用しようというもの。地元の小浜温泉のバイナリー発電施設も参考になるのではないか」と述べた。
今回の総会では、地熱対策特別委員会の佐藤好億委員長から「自然保護・温泉源保護・温泉文化保護の見地から無秩序な地熱発電開発に反対する」決議が提出され、承認された。
決議文には「地熱発電開発にあたっては、電力確保と温泉資源保護の2つの公益が共存することが前提」とし、無秩序な開発を回避するために(1)地元(行政や温泉事業者等)の合意(2)客観性が担保された相互の情報公開と第三者機関の創設(3)過剰採取防止の規制(4)継続的かつ広範囲にわたる環境モニタリングの徹底(5)被害を受けた温泉と温泉地の回復作業の明文化――の5点を提案した。現状では、原発事故などと違い、たとえ温泉が枯渇したとしても賠償規定がないことを問題視している。
佐藤委員長は「この半年間、全国の現場を個人の実費で調査してきた。しかし、今後さらなる調査や情報収集には現状の予算ではどうしようもない。学術委員の先生方にも現地視察できるように、地熱対策委員会に寄付行為をお願いしたい」と訴え、賛成多数で承認された。さらに福島での地熱発電問題にも協会として反対していくことが確認された。
来年度の会員総会の開催地は福井県のあわら温泉に決まった。
なお、来年4月1日に移行する一般社団法人日本温泉協会の役員は次の各氏(副会長以上)。
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【会長】廣川允彦(松川屋那須高原ホテル)
【常務副会長】石村隆生(仙郷楼)
【副会長】山村順次(学術部委員長)▽根津文博(御園ホテル)▽佐藤好億(大丸あすなろ荘)▽岡村興太郎(法師温泉長寿館)▽森行成(さかや旅館)▽八木眞一郎(あわらの宿 八木)