地熱対策特別委員会開く
日本温泉協会(廣川允彦会長)は8月10日、東京都内の八重洲倶楽部で、地熱対策特別委員会を開いた。今回は環境省や関連団体も出席し、意見交換を行った。そのなかで無秩序な地熱発電に改めて反対したうえで、開発側には電力確保と温泉資源保護の2つの公益が共存する必要があることを強調した。
同協会では再生可能エネルギーとして注目されはじめた地熱発電が、温泉地周辺の自然環境や既存の温泉源、温泉文化に悪影響を及ぼす恐れがあるため、反対の意思を表明してきた。
冒頭で佐藤好億委員長は「今日まで培われてきた日本の温泉文化が、地熱発電によって脅かされている。とくに温泉の枯渇、成分分析の変更等に影響があるのではないかと危惧されている。皆様の力を借りるなかで、今後のことについて話し合っていきたい」とあいさつした。
議題には無秩序な地熱発電開発に反対する内容の決議文や、福島県の地熱反対運動の支援などが挙げられ、出席者が意見を出し合った。決議文には全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会をはじめとした関連団体も賛同した。
日本自然保護協会の辻村千尋保護プロジェクト部常務理事は「地熱に反対しているということは、原子力発電に賛成していると市民は誤解してしまう。それをどう変えていくかが焦点になっている」と述べた。
また、理学博士でもある甘露寺泰雄地熱対策特別委員は「自然のものなので、過剰採取を証明するのは難しいが、定期的な源泉の温度と量の調査が大きなカギになる」と提言した。
今後は地域主義を念頭に置きながら、「無秩序な地熱開発」を回避するための5項目の条件内容をより明確にしていく。
なお、8月29日に環境省で「自然環境の保全と調和した地熱開発のための検討会議」が開かれ、自然保護団体や温泉事業者など保護サイドのヒアリングが行われた。