モバイル決済、普及が本格化 「お金の移動」シンプルに
2018年8月29日(水) 配信
国内でも、モバイル決済普及に向け準備が進む。横浜銀行のはまPayなど、実際にサービスを導入する事業者も出てきた。ゆうちょ銀行やりそな銀行も、今秋から来年にかけてサービスを始める。LINEなど、IT企業の参入も著しい。経済産業省は普及を視野に、来年度の概算要求に一定額を計上する。グローバルの規格に準拠した仕組みが整えば、国内とインバウンド、双方の消費増につながる。
モバイル決済のポイントは、二次元(QR)コードの利用と、決済と同時に口座から預金が引き落とされること。クレジットカードに代表される、与信供与型のビジネスモデルを取らないかわりに、導入店舗・ユーザーが負担する手数料は低くなる。中小規模の小売店は、低コストで新たな決済手段を導入できるのだ。LINE Payを進めるLINEは、3年間の手数料無料(導入店舗側)を発表。国内での実用化に本腰を入れた。
最新のインバウンド消費額をみると、主要ターゲットである東アジアの国・地域(中国・台湾・韓国)が6割(7243億円)を占める(18年4~6月期)。二次元コードによるモバイル決済が一般化している中国は、3620億円。国内での受入体制が整備されれば、アリペイ(Alipay)やウィーチャットペイ(WeChat Pay)など、ユーザー数8億人を超える巨大市場がより身近になる。
現金信仰が根強い日本では、買い物=「お金を払う」と考えられがち。与信供与の概念に基づくクレジットカード決済も、「お金を払う」ことの延長線上にある仕組みだ。
モバイル決済の普及が進む中国では、買い物=「お金の移動」と、考え方がよりシンプル。ユーザー数が8億人を超えていることからも、銀行口座にあるお金を手軽に移動できる仕組みは、多くの人に受け入れられていることが分かる。モバイル決済の一般化によって、国内でも「お金の移動」という考え方が広まれば、国内旅行の消費増を望める。
17年の国内旅行消費額は21兆1,130億円。14年以降増加傾向にあるものの、伸び率は振るわない。本格的な普及は、横ばいの国内市場をテコ入れする良い機会となるかもしれない。
楽天や、ヤフー、LINEなど、フィンテック事業強化の一環として事業を展開する企業がある一方、金融インフラの根幹を担ってきた銀行も待ったなしで参入の手を挙げる。各事業者の努力によって、地域の宿泊事業者や販売業者への浸透が待ち遠しい。