医療通訳士を拡大
中国からの訪日客に対応、FUNtoFUN
人材派遣業などを展開するFUNtoFUN(櫻木亮平社長、東京都千代田区)と医療ツーリズム業などを手掛けるメディカルツーリズム・ジャパン(MTJ、坂上勝也社長、北海道札幌市)はこのほど、中国からの医療ツーリズム拡大に対応し、事業連携を強化すると発表した。10月にMTJ本社の札幌で中国語医療通訳士養成講座を開講するなど、連携強化で中国語医療通訳士の養成・派遣事業の拡充と全国展開を目指す。
インバウンド医療観光については、2010年に政府が閣議決定した「新成長戦略」や今年3月の「観光立国基本計画」でも重要な戦略の1つとして位置づけられ、観光庁も研究会を設置して議論を重ねてきた。
そうしたなか、従来の業務で中国人を多く雇用していたFUNtoFUNは11年6月から、中国語医療通訳士養成事業として「日本医療通訳アカデミー」を開始。「中国医療通訳士1級養成講座」を開講し、受講者は7月末の時点で100人を超えた。
9月12日に開いた会見で櫻木社長は同事業について「実質当社のみ」と語り、「関西や横浜でも展開予定で、2―3年で全国展開を目指す」と展望を語った。現在、養成講座の卒業生100人のうち、約20人が中国語医療通訳士の派遣業務に登録しており、約半数は実践を踏んでいるという。受講は中国語、北京語、日本語が話せることが前提で、受講者のうち85%は中国人、15%は日本人が占める。今後は、現場での応用力を高めるため、日本文化やビジネスマナー、倫理観などを重視した新カリキュラムを取り入れていく。
中国の富裕層を対象にした医療ツーリズム事業で月間20―30人を送客するMTJは、自社でも25人の中国語医療通訳士を抱えており、今回の連携強化で、13年3月までに通訳士を50人まで増やしていく。
坂上社長は中国の医療観光の傾向について「富裕層は医療行為を海外へ求める。治療の場合はアメリカなどが多い。求めているのは安心・安全。日本で扱うのは健康診断だが、日本ブランドへの信頼も崩れていない」と紹介した。同社の顧客単価は80―100万円と高額で、売上高は前期、全事業計で3億円を計上。来年3月期には5億円まで増収を目指す。
一方、通訳士の課題として民間資格のため、責任の所在が明確でないことなどを提示。そのため、同社は通訳士を自社派遣することで責任を明確化させ、顧客にも安心感をアピールしているという。今後は「ホスピタリティをどう担保するかが課題。ドクターレベルまで追求できる能力が必要になる」と語った。
さらに、会見には受入側の医療施設から日本医科大学検診医療センターの百崎眞事務室長も出席。同センターの中国人患者の受入実績は、今年4月から現在まで約100人。今年度は約200人を予想している。百崎氏は「当初、家族や留学中の学生などが通訳として同行してきたが、医師の言葉が正確に伝わっているか不安だった。しかし、医療通訳士をお願いするようになり検診結果の説明もスムーズになった」と、医療現場から見た医療通訳士の必要性などを語った。今後は「文化の違いやマナーなど説明されているが、問題もある。通訳士には現場での調整力を求める。できる限りクオリティーを上げていただきたい」と述べた。