「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(92) お客様の声を活かしておもてなし 「目的をしっかりと検討して」
2018年9月8日(土) 配信
「お客様の声を聞く」ということは、サービス業にはとても大切なことです。しかし、そのやり方をみると、不十分だと言わざるを得ません。
アンケートを取っている施設は多くありますが、そのアンケートは十分に活用できていません。それは、アンケートを始めた理由にあります。他館もやっているからと、多くは他館のアンケートを参考にしながら作られています。
アンケートの取り方も「よろしくお願いします」と手渡されることはほとんどなく、部屋に置かれているだけです。これでは、わざわざ書く人は少ないでしょう。
そこで、アンケート回答者を増やすために、プレゼントやポイント付与があったりします。
より多くの声を聞くことは大切ですが、アンケートを集めることが目的になってしまってはいけません。アンケートは、なぜするのか、何に使うのか、という目的をしっかりと検討してから導入すべきものです。
目的の1つは、準備したサービスでお客様が満足されたのかどうかのチェックです。お客様の声から、現状認識と改善を加えていくツールとして大切なものです。毎日顔晴っているスタッフたちのやりがいにもつながるでしょう。
また、アンケート内容をホームページなどで公開すれば、今後利用を検討される人たちの参考にもなります。しかし、これだけでは、わざわざ大切な時間を使って書いたお客様のメリットにはなりません。アンケートを回答されたお客様には、もう1つの機会を捉えて、お客様の声を聞くことが必要です。
それは事前の問い合わせや予約時です。アンケートはあくまで利用体験をした人の声です。しかし、これから利用する人の声を聞くことで、そのお客様の満足度を個別に高めることができ、リピーターを能動的に創り出していく戦略としても非常に大切です。これを実施している企業の満足度は非常に高く、かつリピーターも多いのです。
「どのような目的で利用するのか」「期待していることは何か」など事前に分かれば、最幸のおもてなしの準備ができます。真のおもてなしとは、そのかけた手間や時間なのです。
アンケートに回答していただいたお客様に返事を出すのも大切ですが、その時間を次の確約をもらえるようなサービスに使うことが効率的です。お客様の声を事前に聞き、現場で最幸のおもてなし準備をし、その実行で感動を提供する。さらに、その手間をかけたおもてなしが十分だったのかをアンケートで伺い、次のサービスの向上を目指す。お客様の声を活かすとは、この循環を創ることなのです。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。