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“産業観光の輪を”

2012年10月21日
編集部
産業観光まちづくり大賞の受賞者と主催者
産業観光まちづくり大賞の受賞者と主催者

酒田市がまちづくり大賞(全国産業観光 フォーラム岡谷)

 全国産業観光フォーラムinおかやが10月11・12日、長野県岡谷市のカノラホール(岡谷市文化会館)で開かれた。テーマは「made in Nagano」。

 開会式の冒頭、副実行委員長の林新一郎岡谷商工会議所会頭は「長野県で産業文化の先進地である岡谷を堪能してほしい」と話した。

 主催者あいさつで全国産業観光推進協議会の須田寛副会長は「この会合は今年で12回目だが、過去最高の人が来ている。岡谷市は古くから発達している製糸やから精密工業など伝統・近代が合わさった非常に貴重な産業地域。産業観光は連携が必要だが、この会合で各地と情報を共有し、産業観光の輪を広げていってほしい」と述べた。

岡谷市の今井竜吾市長
岡谷市の今井竜吾市長

 開催地を代表して、実行委員長の今井竜吾岡谷市長は「岡谷は昔から製糸業が栄え、〝シルク岡谷”の名を世界にはせ、日本の近代化を支えてきた。製糸産業で培ったものづくりの精神・技術を活かし、時計・カメラなどの精密機械工業も発展。“東洋のスイス”と称されてきた」と話し、「明治から“ものづくり”の街として栄えてきたが、このDNAは若者にも着実に継承されている。今回ものづくりの魅力を全国の地域に発信できるチャンスをいただいた。産業集積地ならではの産業観光の魅力を十分に感じていただきたい」と語った。

 続いて全国産業観光推進協議会が、産業観光まちづくり大賞表彰式を行い、山形県の酒田市・酒田観光物産協会・酒田商工会議所が金賞を受賞した。評価の視点は顧客価値・対象資源・編集視点・商品力・事業性・国際性の7項目。

 多摩大学大学院の望月照彦教授は金賞に選んだ理由について(1)古い施設を残し、活用している(2)地域の産業を風土産業として未来につなげている(3)各団体が産業観光を協力して支えている――ことを評価し、「産業観光は、沈みがちな地域経済や文化に大きなインパクトを与えるもので、地域を見直して、地域の誇りを再生する役割がある。日本の中に次々に産業観光を通して新しい文化や技術が生み出されていると感じた」と述べた。

 受賞団体は以下の通り。

 【金賞】酒田市・酒田観光物産協会・酒田商工会議所【銀賞】天草市(熊本県)【特別賞】みたけ華ずしの会(岐阜県)

 記念講演は、宇宙飛行士の山崎直子氏が「宇宙への夢と旅―宇宙、人、夢をつなぐ―」をテーマに講演を行った。

 次に分科会が行われ、第1分科会は「歴史と伝統を受け継ぐ産業観光の魅力と可能性!」、第2分科会は「産業観光から次世代へ“ものづくり”の継承!」をテーマにパネラーが意見を出し合った。総括では、分科会報告及び総評があり、産業観光の重要さについて再確認した。

 また12日は、エクスカーションが行われ、出席者はうなぎツアーやかりんツアーなど7つのコースで産業観光の現場を巡るツアーを楽しんだ。

 次回は石川県小松市を会場に、13年11月21・22日に「全国産業観光フォーラムinこまつ」が開催予定になっている。

ものづくりのDNA、2つの分科会で探る

 全国産業観光フォーラムで行われた分科会は、2部構成に分かれ、第1分科会は「歴史と伝統を受け継ぐ産業観光の魅力と可能性!」、第2分科会は「産業観光から次世代へ“ものづくり”の継承!」をテーマに行われた。

第1分科会のようす
第1分科会のようす

 第1分科会は、日本観光振興協会常務理事・総合研究所長で法政大学キャリアデザイン学部講師の丁野朗氏をコーディネーターに起用。パネラーは、宮坂製糸所代表で岡谷ふるさと産業研究会会長の宮坂照彦氏、サラダ野菜の生産と販売、人工植物栽培システムを開発するラプランタ社長の五味文誠氏、「ニッポン工場の鳥肌技術」編集者の萩原淳氏の3人。

 テーマをさらに諏訪エリアのDNAが持っているポテンシャルについて、資源を産業観光のなかでどのように活かしていくかの2つに分け、議論した。

 DNAのポテンシャルについて宮坂氏は「岡谷は製糸開発に成功し、技術を“諏訪式”として世に広めた。これは岡谷のDNAの賜物であり、若い女性と蚕の改良で、より盛んになった」と説明した。

 また、資源を産業観光にどう活かしていくかについて五味氏は「器用さ、勤勉さ、恵まれた環境、ものの品質に対する意識が高い点から、高付加価値商品を開発し、ゆくゆくは病院や介護施設への提供できるような機能性に優れた健康野菜を作りたい」と話した。

 また、荻原氏は「メディアに見つけてもらうためには魅力的なコンテンツが大事。お土産やビジュアルが目を引くものなど工夫を凝らすようにしてほしい」と語った。

 まとめで丁野氏は「諏訪地域の産業だけではなく、祭りやアートなどさまざまなもののなかにある技を全体として編集することが産業観光の編集視点になっていくと思う」と話し、「地域継承として人づくりは大変重要になってくる。さらにビジネスとしての産業観光を事業のコラボレーションなどを通してより進めてほしい」と話した。

 第2分科会のコーディネーターは、信州大学総合工学系研究科博士課程専門職コース特任教授の宮澤伸一氏。信州の名工でサンメディカル技術研究所の小尾治一氏、技術五輪全国大会金賞を獲得したセイコーエプソンの小松郁清氏、イデアシステムの小林睦巳氏がパネラーとして出席した。

 第2分科会ではテーマをさらに(1)ものづくりのDNAはどこに宿るか(2)子供たちへの伝承方法(3)日本経済復興へのヒント――の3つに分け、会場の質疑応答と交えながら議論した。

 ものづくりのDNAは、人に宿り、若い人に継承していくべきという結論になったが、会場の声のなかには、ものにもDNAが宿っているという意見もあった。

 また、子供たちの伝承手段としてインターンシップが挙げられた。岡谷市ではものづくりフェアや工業メッセなど地方では規模の大きいイベントを通年行うなどして技術を伝えている。

 それに加えて、一人っ子の家庭が増え、両親以外の大人と関わる機会が少なくなってきている現代に、インターンシップを通して世間と接し、社会全体で一人前の技術者に育てていくことが必要だということで意見がまとまった。

 日本経済復興へのヒントでは、フォーラムをきっかけに継続的に議論し、プランニングして実現させようと決意を新たにした。また、行政を中枢に連携して解決していくことも大切であると強調した。

 ほかにも、山崎直子氏の記念講演を参考に、宇宙ステーション内での実験を子供たちに命題して提案させるコンペや郷愁をそそるようなディスプレイにし、集客をはかるなどさまざまな意見が出された。

総括する須田寛氏
総括する須田寛氏

 最後に総括が行われ、全国産業観光推進協議会の須田寛副会長は「2つの分科会に共通する大きなテーマは〝DNA〟だった。岡谷市のDNAの形成は立地条件、進取の気性、勤勉の3つにあったと感じている。それがあったからこそ、現在は製糸業DNAをベースにした精密工業や農業工場など、さらに発展させることができた」と話し、「このフォーラムでぜひ全国の方々に岡谷のDNAを発信してほしい。岡谷の観光は全国あげて伝承していかなければならない」とまとめた。

 
 
 
 

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