「味のある街」「バイオリン飾り付小箱」――ショコラティエ・エリカ(東京都港区)
2018年9月10日(月)配信
私が都内で好んで歩く場所は白金台だ。「シロガネーゼ」でも有名な、高級住宅街の広がるエリアの中に、たびたび訪れる場所がある。その1つが東京都庭園美術館だ。この建物はもともと、1933(昭和8)年5月に朝香宮邸として竣工した。アール・デコの精華を積極的に取り入れ、一方で日本古来の高度な職人技を盛り込む。そしてほとんど内部を改造されないまま美術館となった。暖炉や鏡、数々の装飾が残されている居間や客室に展覧会の絵画や彫刻などが置かれる。展示品も背景も、と目が忙しくなるほどたっぷり楽しめる場所だ。近くの松岡清次郎氏が収集した松岡美術館も素晴らしい。国立科学博物館附属自然教育園もある。今も都会の中に豊かな自然が残る場所だ。園路を歩くとさまざまな植物が見られ、池や小川もある。
この白金台の外苑西通り沿いにあるのがショコラティエ・エリカだ。チョコレートの製造から販売までを手掛ける専門店で、百貨店などでは手に入らず、この店はいつも多くの客でにぎわう。店の内外装は白とミントグリーンの2色。毎年8月は暑さでチョコレートが溶けやすいため1カ月間店を休み、9月から再開するというこだわりの店だ。自分でも買いに訪れるが、先々月、久しぶりにお土産としていただいた。
まず目に飛び込むのはパッケージだ。いただいたのは「バイオリン飾り付小箱」。エリカのパッケージはどれも素敵だが、音符の包装紙の上に小さなバイオリンが乗ったこの小箱はとりわけかわいい。うきうきと包み紙を取り、箱を開けると一口サイズのミルクチョコレート「Diamant(ディアモン)」が入っている。銀紙をむいて口にすると、滑らかな口触りが、手のかかったものであることを伝える。上品な甘さも心地いい。もう一つと手が伸びるチョコレートだ。エリカにはマシュマロとクルミの入った1番人気の「マ・ボンヌ」など、ほかにもいくつもの種類のチョコレートがある。白金台を歩き、帰りに今度は自分でエリカのチョコレートを買って帰る……この秋の楽しみな予定ができた。 (トラベルキャスター)
コラムニスト紹介
トラベルキャスター 津田令子氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。