〈旬刊旅行新聞9月11日号コラム〉相い次ぐ自然災害 観光への打撃も心配 1日も早い復興を
2018年9月11日(火)配信
台風21号の影響で関西国際空港が一時閉鎖された。その直後、最大震度7の平成30年度北海道胆振東部地震が襲い、北海道の広い範囲が被災した。停電や交通機関がストップし、新千歳空港も一時閉鎖となった。
7月の西日本豪雨に続き、日本各地で大規模な自然災害が相次いでいる。地震は事前予測が難しいが、台風や豪雨はある程度、前もって準備ができる時間的な余裕がある。これから訪れる災害は「これまでに経験したことがないような激しいものかもしれない」との認識が必要な環境となってきた。
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今年3月に発行された「観光危機管理ハンドブック」(朝倉書店)が机の上に置いてある。JTB総合研究所常務で、観光危機管理研究室長の髙松正人氏がまとめた書籍だ。「観光客と観光ビジネスを災害からいかに守るか」を主眼に書かれている。髙松氏が定義する「観光危機管理」について、少し長いが引用する。
「観光客や観光関連産業に甚大な負の影響をもたらす観光危機を予め想定し、被害を最小化するための減災対策を行い、観光危機発生時における観光客への情報発信、避難誘導・安全確保、帰宅困難者対策等を予め計画・訓練し、危機発生時にはそれにもとづく迅速な対応を的確に行うとともに、観光危機の風評対策、観光関連産業の早期復興、事業継続支援等を組織的に行うこと」。
今回の台風で、関西国際空港に利用客ら約3千人が取り残された。海上空港であるがゆえのさまざまな困難も露呈された。旅館・ホテルや観光施設、テーマパークなども、起こりうるあらゆる危機を想定し、被害を最小化するための減災対策が必要だろう。
同ハンドブックには、米国・フロリダ州におけるハリケーン接近時の強制的な退避命令の事例なども紹介している。
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台風21号や、北海道で発生した地震の被災地で困惑する外国人観光客のようすも報道されている。旅行者は旅先では地理的にも不案内であるため、大きな危険に晒されやすい。地元の人に比べて、圧倒的に情報量も少ない。旅先で自然災害に遭うことほど心細いものはない。旅行者へのきめの細かい情報提供も大切だ。
旅先の自然災害に関して、私自身、無頓着な方だった。しかし、オートバイで旅をするようになってからは、天候や気象状態に鋭敏になってきた。
クルマで山道を走っていて小雨が降れば、指先でちょいとワイパーを始動すると、雨の存在は忘れてしまうが、オートバイでは2分も走れば全身がずぶ濡れ状態になってしまう。強風も雷も豪雨も怖い。遠くの空を見て、雲の色や厚さ、風が冷たく変化していないかなどを自然にチェックするほど極度の臆病者になったが、「悪くはないな」と思っている。
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1年前の夏、250㏄のオートバイで北海道を1周した。日本国内で北海道のような広大な大地を体感できる場所はない。北海道の存在価値を改めて深く知る機会になった。だが、その広さゆえに、自然災害への対応の難しさもある。
インフラも少しずつ回復しているようだ。1日も早い復興を望んでいる。観光への打撃も心配だが、復興には観光の力が不可欠だ。北海道を再び訪れて、早く復興の力になりたいと思っている。
(編集長・増田 剛)