ひとり旅が各世代へ、13年国内旅行は微増
日本交通公社 旅行動向シンポ
日本交通公社は2012年12月12日に「第22回旅行動向シンポジウム」を開き、主任研究員の黒須宏志氏が旅行マーケットの最新動向と2013年の展望について講演した。13年の国内観光旅行は旅行量が微増、消費単価は微減、海外旅行者数は12年比2・7%増の1900万人、訪日外客数は同8・4%増の900万人と予測した。
国内観光旅行市場では、JTBが10月に行った旅行者動向調査をもとに、12年の国内旅行マーケットを分析。(1)飛行機を利用した旅行の増加(2)1カ月以上前の予約比率の増加(3)オンライン予約比率の伸びがやや鈍化(4)ひとり旅と友人・知人、カップル旅行などの増加(5)夏休み・年末年始など繁忙期と平日の旅行がともに増加(6)2―4泊の旅行の増加――などの特徴をあげた。黒須氏は「平日の旅行増はシニアが牽引し、1泊から2―4泊へと需要が移行しつつある」と語った。
LCCを利用した旅行は、(1)旅行頻度の低い層ほど利用率が高い(2)収入階層の低い層ほど利用率が高い(3)20代の利用率が最も高く40代以上の利用率が低い(4)泊数の長い旅行ほど利用率が高い(5)ひとり旅の利用率が最も高く家族旅行が一番低い――と分析した。
13年の国内観光旅行市場は、旅行量が微増、消費単価が微減と予測。「質重視による単価上昇の要素が働く一方、オンライン化、間際化、LCCなどによって低単価層が拡大する」と分析。トレンドとしては(1)オンラインシフトはやや減速しつつ進む(2)前もって休みを取り旅行を計画する人の増加(3)一方で休みが取れた時にすぐ旅行する間際予約の増加――をあげ、「ひとり旅が幅広い世代に広がり、『リセットの旅』などがキーワードになってくる」と話した。
一方、海外旅行市場では12年の海外旅行者数は1850万人と推計。11年10月―12年9月の性年代別旅行者数増減データを示し、「国内はシニアが中心だが、海外では脇役。40、50代のビジネス需要や円高を受けた20代女子が伸びている」と語った。方面別ではベトナム、シンガポールが好調で、FIT化で消費単価は微減。13年の海外旅行者数は1920万人を予測するも、航空座席供給量を好調なインバウンドと分け合う関係で、最終的には12年比2・7%増の1900万人と予測した。
インバウンドでは、12年の訪日外客数を830万人と予想。「13年の鍵はアジアになる」と話し、13年のアジアマーケットを予測した。(1)足元の経済不安にも関わらず、中国人の旅行意向指数はさらに上昇(2)中国を除く北東アジアの他の主要市場は減速しつつも堅調な成長を維持(3)東南アジアはインドネシアがリード、タイは2ケタの伸びを回復、シンガポールは減速の可能性――などをポイントにあげ、「アジアマーケット全体としては伸び率が微減となるだろう」と解説。13年の訪日外客数を前年比8・4%増の900万人と予測した。
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また、第1部の旅行マーケットレビュー2012ではリサーチ・アンド・ディベロップメントの野口秀樹リサーチ&ソリューションズ部長をゲスト講師に招き、「消費者意識は震災を挟んでどう変わったか」について講演。野口氏は、震災前後数年間の消費者意識の調査データを示し、「震災による消費者意識の変化はほとんどが一過的な『揺らぎ』だった。『内食化の進行』『個人生活の重視』『安全・安心への志向』などは震災前からの影響で、震災がその傾向に新たな意味を付け加えた」と話し、「『喜び』や『感動』など感情を体験できる空間にはお金を払う、という傾向が強まっている」というオリエンタルランドの上西京一郎社長の分析を紹介した。