test

温泉と地熱開発、“共存できない”(日本温泉協会)

2013年7月11日
編集部

大山正雄会長

日本温泉協会・大山会長が語る、地熱発電0.2%⇒0.4%のために温泉を危機的にする価値はあるか

 日本温泉協会(大山正雄会長、1448会員)は6月25日、福井県・あわら温泉のグランディア芳泉で2013年度会員総会を開き、大山会長は地熱問題について、無秩序な開発に反対との立場を改めて表明し、「温泉と地熱開発は 棲み分けはあっても共存はできない」との考えを示した。

 今年度は昨年11月に一般社団法人に移行した協会のあり方と事業の見直し、財政の再建に取り組む。

 大山会長は「会員数が減少しており、組織の見直しが必要」とし、「小粒でもステイタスの高い組織にしたい。熱意のある会員を待っている」と述べた。さらに、宿泊予約サイト「るるぶトラベル」との連携強化をはかる。

 今年9月には事務局を東京都千代田区平河町の全旅連と同じビルの「全国旅館会館」に移転する。また、来年度の会員総会は群馬県・四万温泉で開くことを決めた。

 地熱問題について、大山会長は次のように語った。

□  ■

 東京電力福島第一原発事故により、電力不足への懸念から、地熱開発が急速にクローズアップされてきた。地熱発電と温泉との問題は古くて新しい問題であり、長年にわたり日本温泉協会は温泉資源の保護のため、地熱発電について反対してきている。

 しかし、今回の地熱開発は国家的事業として、これまでと比べ強力であり、温泉の存亡に関わる段階に直面している。

 現在、日本の地熱発電所は全国で18カ所。生産される総電力は54万キロワット。この54万キロワットの電力に必要な熱量は、日本の中規模から大規模の温泉で利用している総熱量と同等で、1カ所の地熱発電所だけでも草津や箱根の大温泉地の全熱量に匹敵する。九州の八丁原や秋田県の澄川地熱発電所では大温泉地の数倍から10倍近い熱量を使っている。

 この地熱発電を当面2倍、将来は10倍にしようと計画され、着々と準備が進められている。現在の地熱発電でも全温泉地の全熱量に匹敵し、2倍となると温泉への影響があると考えるのが当然である。そして、さらに問題なのが地熱発電所が使った熱水を薬品を入れて地下に強引に戻すこと。これにより、地熱発電所が掘削している地下3千メートル付近までの地下環境は破壊される。これは地熱発電を止めたとしても永久に残ってしまう。

 地熱発電にとって必要なものは熱であって、熱水は汚れたものであっても構わない。しかし、温泉は、温泉の質そのものが大切。従って、地熱発電と温泉とは棲み分けはあっても、共存はできない。また、地熱発電所は無人化できるが、しかし、1カ所の地熱発電所に相当する規模の大規模温泉地は、温泉宿の従業員、お土産店、バスやタクシーなど数万人が働いている。雇用の面から見ても、納得できない。しかも、現在の地熱発電所の総電力は日本全体の0・2%。0・2%を0・4%にするために温泉を危機的状況にするだけの価値はあるだろうか?

 日本温泉協会は無秩序な地熱開発に反対する。

いいね・フォローして最新記事をチェック

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。