2019年「旅の8大トレンド」発表 ブッキング・ドットコム
2018年10月23日(火) 配信
ブッキング・ドットコム・ジャパン(アダム・ブラウンステイン代表、東京都港区)はこのほど、2019年の「旅の8大トレンド」を発表した。1億6300万件もの口コミと、29カ国2万1500人の旅行者を対象とした調査の結果から導き出した。テクノロジーの発達により、AI(人工知能)やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)などを駆使した新たな旅のツールが、旅のあり方を変えそうだ。
最高マーケティング責任者であるパパイン・ライヴァース氏は「2019年は、旅行が大きく変化する1年になると断言できる」と調査を振り返った。
□1. 学びに満ちた旅
「新しい通貨や自己充足の手段の到来が象徴するように、19年には旅をさらに意義あるものにすべく、思い切った決断をする旅行者の姿が目立つことでしょう」(同社)。
全世界の旅行者の56%は「旅を経て人生をより良く生きるための掛け替えのないスキルを得た」と答えた。教室やオフィスの外での経験が多くの企業に重要視されている現代。とくにZ世代(1990年代半ば以降に生まれた若年層)は、人生をより良く生きるスキルと、旅から得られる実用的な学びの価値、大学の高額な学位の価値をより冷静な目で比べるようになるという。
世界の旅行者の間でとくに人気の高いものは、新しいスキルを習得できる文化交流(68%)や、ボランティアの旅(54%)、そして海外への就業体験制度(52%)であることが分かっている。
□2. 簡単さが肝心
旅行関連のテクノロジーの主な評価基準は、「簡単さ」となる。これまではAIやVR、音声認識が話題に上がってきたが、今後はこれらの技術を応用した革新的なテクノロジーに注目が集まるという。
ルームキー代わりになるスマートフォン機能や、母語でコミュニケーションが取れるロボットコンシェルジュなど、多彩な可能性が期待されている。
一方で、「胸が高鳴るようなイノベーションは、何も遠い未来のテクノロジーのみに限った話ではありません」(同)。スマホアプリを介した荷物追跡(57%)や旅行の計画や予約、その他の雑務を担う多機能アプリ(57%)のほうが、旅先での自動運転車(40%)よりも多くの旅行者の期待を集めている。
さらに、旅行を計画する際に役立つテクノロジーの開発も進むと考えられている。世界中の旅行者の31%は、旅行に関する質問に答えてくれる音声操作式の「バーチャル・トラベル・アシスタント」を自宅で活用すること、そして5人に1人はARなどの技術を使って「到着前に旅の行き先のようすを確認することを望んでいる」といった結果が出ているという。
□3. 宇宙の夢は遠くとも、見果てぬ地への憧れは続く
旅行者の40%は、将来叶うであろう宇宙旅行を楽しみにしていると回答し、38%は実際に自分で体験してみたいと答えている。一方で、宇宙旅行が現実になるまでは時間がかかる。見果てぬ地へのあこがれは、地球上にある未開の地に対する冒険心として表れるという。
「未開の地と言っても、人々の興味は大地の遥か下に向いており、旅行者の60%は海底の宿泊施設に泊まってみたいと回答している」。19年は、一見実現不可能ともいえるほど、まったく新しいタイプの別荘やホテルが登場していくことになりそうだ。
□4. 個々の利用者に合った情報がより重要に
旅行についての情報の集め方や使い方は、急速に発達している。これまでの旅行ガイドに代わり、個人の興味や好みを反映した短期的なコンテンツが重要になってきそうだ。
旅行者の34%は、「自分にピッタリな旅行の情報を集めてくれる存在」を求め、 41%は「AIなどのテクノロジーを用いて、過去の旅行の経験に基づいた旅行の提案を行うことを旅行関連の会社に期待している」と答えている。このほか半数以上(52%)は、「自分が心から望むものを案内してくれる、デジタルツアーガイドのような旅行にまつわるイノベーションを活用したい」と答えた。
旅行コンテンツの制作に携わる団体らは、利用者のニーズが最も高いときに、コンテンツを配信できるようAIを駆使したより効果的な方法を編み出していくと予想される。
□5. 社会問題を意識した旅
社会問題を意識した旅行者が際立つ年になるという。人権や平等、労働環境への関心が世界的に高まっているなか、旅先の検討時に49%は、「現地の社会問題」を非常に重要な要素とし、58%は「現地の問題がそこに暮らす人々に悪影響を与えている場合、その目的地は訪れない」と回答している。
加えて、旅行者は、ジェンダーや人種、性指向を問わず安全に旅を楽しめるような環境を求めている。目的地がLGTB+にとって、どれほど過ごしやすいかをランキングで示すサイトも出てきたように、数多くの目的地と団体も女性の1人旅を支援する体制を今後さらに整えていくと考えられる。
同社のデータによると、旅行者の19%はLGBT+の祭典「プライド」に参加するために旅行を計画していると答え、なかでも18~34歳の若年層は30%が参加の意思を示している。
□6. 旅にもエコ意識を
使い捨てプラスチックなど資源に関する問題は引き続き世界的な関心事となると予想される一方で、このような環境への懸念が実際の大規模な環境活動へと変容していくという。
ミレニアル世代とZ世代の旅行者は、目的地で持続可能な体験を求め、宿泊施設はプラスチックの使用量を減らし、持続可能性を高めようと取り組むという。世界中の旅行者の86%は「滞在による環境への負荷を相殺できるような活動に参加したい」と答え、37%は「ビーチや観光名所に捨てられたプラスチックやごみを取り除く活動に加わりたい」と回答。関心は高い。
「環境への強い責任感から、旅行者が環境への配慮を基準にして旅の目的地と宿泊施設を選ぶようになっていくことを考慮すると、持続可能なスタートアップへの投資は今後さらに不可欠なものとなるはず」。19年は、旅行関連の新たなスタートアップや各企業が、画期的なテクノロジーを用いて、持続可能な動きを活発化させるはずだ。
□7. 現地での体験が旅の醍醐味に
旅先での体験に重きを置いた旅行は昨年の主な旅行のトレンドの1つだった。旅行者の60%が「体験を物質よりも大切なものと認識している」事実から、 19年はこのトレンドがより一層拡大するという。「現地ですること」は「現地へ行くこと」と同等、またはそれ以上の価値を持つようになる。
体験には、忙しい日々のストレスを和らげる効果がある。旅行者の42%が「19年に童心に帰れるような目的地を訪れる予定だ」と答え、同様に回答した旅行者の中でも、とくにミレニアル世代やZ世代の割合が顕著だった。
これらの旅行者たちの想いを叶えようと、ボールプールや空気で膨らませた城など、子供らしい遊び心に溢れた設備を導入しようとする宿泊施設の登場が予想される。
□8. 大満足の小旅行
世界の旅行者の半数以上(53%)は、「19年はさらに週末の旅行にでかけるつもりだ」と回答した。旅行者好みにカスタマイズしつつ、さまざまな魅力を短期間に詰め込んだ小旅行が流行すると、同社はみる。
移動に関するイノベーションが小旅行の流行りの一助となる。移動に関する航空経路の拡大から、航空券の料金競争、シェアもできる手軽なオンデマンドのレンタカー、公共交通機関の状況をリアルタイムでどこでも簡単に確認できるシステムに至るまで、移動手段に関するイノベーションは発達を遂げている。
これらの変化で、短期間の旅行は多様な個人のニーズを満たすことができるようになる。同時に、「ごく短い期間でも良いから旅行に出かけたい」と思わせる、個性が光る魅力的な宿への関心が輪をかけて高まっていくという。