インフラツーリズム拡大へ初会合開く 年間160万人集まり人気 課題も浮き彫りに
2018年11月9日(金) 配信
国土交通省は11月9日(金)に東京・霞ヶ関で、ダムやトンネルなどの社会インフラを観光資源とするインフラツーリズムの拡大に向けて、有識者による初会合を開いた。事務局からは、インフラツーリズムに関する初めての調査結果も公表された。これによると、インフラ施設の見学者数は2017年度で年間160万人に上るなど人気を集めていることが分かった。ただ、インフラツーリズムの認知度を調べると、全国で2割を切るなど課題も浮き彫りになった。
インフラツーリズムの取り組みが始まり、5年が経過している。灯台と湾内クルーズに限っては、年間見学者数全体の約7割を占め、すでに観光と一体で運用が進んでいることが分かった。そこで、これらを除いたダムや橋、トンネルなどに訪れる見学者数(17年度約47万人)を、2020年までに年間100万人に増やす目標を提示した。
国交省・栗田卓也総合政策局長は冒頭、「魅力を十分に発揮できていない地域もある」と述べ、「地域一体となって観光資源に磨き上げ、地域活性化に資する新たなインフラツーリズムに育て、展開する必要がある」と力を込めた。
そもそもインフラの公開や開放は、政府目標を実現するための「観光ビジョン」などに組み込まれている。東京・元赤坂にある迎賓館などのユニークベニューと、同様の位置付けとなる。近年では、巨大地下神殿と称される埼玉県の首都圏外郭放水路に年間2万人ほどが訪れ、注目を集めている。
一方、有識者からは「手段が先行している」との意見も出た。マニア向けなどの施設が、急にスポットを浴びている状況だ。施設単体での取り組みが中心で、地域への波及効果は少ない。年間3千万人が訪れる勢いをみせる訪日外国人の受入環境整備も、遅れている状況だ。
今後の方向性としては、インフラ施設の特徴や地域の目標に応じてステップアップをはかる。そのうえでインフラツーリズム全体の集客拡大を目指す。来場者数などで「施設管理者中心の取り組み」、「地域間で協議会設立など体制強化」、「有料化での民間開放」といったレベル別に分類し、それぞれの方針を手引きなどにまとめる見通し。
なお、年末年始で中間的にまとめを行い、今年度中に最終とりまとめを見込む。
座長と委員は次の各氏。【座長】清水哲夫(首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授)【委員】阿部貴弘(日本大学理工学部教授)▽河野まゆ子(JTB総合研究所主席研究員)▽篠原靖(跡見学園女子大学観光コミュニティ学部準教授)