【札幌観光バスグループ・福村泰司社長】受注型から提案型企業へ
2018年11月14日(水) 配信
コンテンツを持つことで潮目が変化――。札幌観光バスグループ(福村泰司社長)が厨房を搭載した大型バス「CRUISE KITCHEN(クルーズキッチン)」を導入してから、丸1年が過ぎた。新しいコンテンツを得たことで、グループの「営業が様変わりした」という。福村社長に経過を振り返ってもらった。
【鈴木 克範】
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2014年4月、安全性の向上を目的に、貸切バスの運賃・料金制度の見直しが行われた。札幌観光バスでは、設備や従業員育成への投資にとどまらず、「コンテンツ創り」に注力している。昨年8月に新造したクルーズキッチンはその一環だ。
ガスコンロや鉄板、ガスオーブン、フライヤーを備えた厨房搭載バスがイベント会場に出向くことで、場所を選ぶことなく、本格的なレストランメニューを提供している。企画に協力するシェフは現在、和洋中あわせて15人ほど。イベントに携わる姿は「創作を楽しむアーティストさながら」という。立食だけでなく、フルコースにも対応できるよう、80人程度の食器やイス・テーブルも用意している。
これまで礼文島で開かれた1日限りの野外レストラン「シェフズテーブル」で活躍したほか、道南・森町の「桜まつり」ではコースディナーを提供。豪華客船・飛鳥Ⅱが釧路港へ寄港した際は、4種800人分の地元グルメを振る舞い、喜ばれた。
活躍が話題になり、道内企業との新たな協業も生まれた。北海道日本ハムファイターズが、誕生15周年を記念して8月に開いた「サマーベースボールフェスティバル」では、空知の食材を使った4種のプレートランチを提供した。「従来の貸切バス事業では考えられなかった縁組」で、北海道の魅力を伝える新しいイベントが生まれている。
この1年で、「セールス活動は、受注型から提案型へと様変わりした」。初年度の稼働は約50日。まだ「目標の半分」と、目指すステージは高い。グランピング人気などの追い風がある一方、需要の高まる「収穫イベント」が8―10月に集中するなど、課題も見えてきた。10月上旬に開かれた「日本ジオパーク全国大会」に出向き、道外自治体への提案にも乗り出した。
クルーズキッチンは、メニュー開発から当日の運営まで、「毎回新店を開業する」に匹敵する苦労がある。そこまでして事業を進めるのは、イベントを通じて「バスを動かす」という目的があるからだ。提案の入り口はコンテンツだが、イベント会場へのシャトルバス利用など、目的は「貸切バスを売る」ことにある。
同グループでは通年企画のクルーズキッチンに加え、キロロリゾートで実施する氷と雪で作られたレストラン「ICE STAR RESORT」、美瑛の「ファームレストラン千代田」の運営も、他社や地域と共同で手掛けている。コンテンツに厚みを持たせ、貸切バス需要の創出に取り組んでいる。