「提言!これからの日本観光」 「街道観光」とまちづくり
2018年11月18日(日) 配信
「街道観光」とは「人間の交流の場であり、その原点でもある『街道』を歩き、街道沿いの景観にふれると共に街道沿いに形成されたまちなみを味わうなど、街道文化に住民目線でふれる観光」と定義される。
広く普及し始めたのは江戸時代からで、神仏詣の旅が市民に広がり、宿駅制の整備もあって、東海道などの主な街道は旅人でにぎわったという。近年、各主要街道が宿駅制400周年を迎えたのを機に、各観光団体、沿道市町などが、旧宿場まちを拠点とした「みちあるき」を提唱、「街道観光」が本格的に拡がった。国も車利用も含む街道からの景観を求める「シーニックバイウェイ」キャンペーンなどを始めた。また、全国街道交流首長会議(事務局・全国街道交流会議)が日本商工会議所、日本観光振興協会などと連携して「街道観光」を呼び掛け、健康志向のウォーキングもこれに合流して、各地で「街道観光」への取り組みが進んでいる。観光庁の「テーマ別観光誘客事業」のなかに17年に「街道観光」が認定事業に入り、「街道観光」も新しい段階に入った。
「街道観光」促進のためには当然「歩ける道」の整備が必要である。とくに、駐車場、ターミナルなど他の交通との結節点整備、適確な情報発信がその前提となる。このためには、道路管理者である国、自治体などの公的主体と民間関係者との強力な連携がまず期待される。同時に地域住民側の受入体制整備への協力、観光客と住民との交流の場の設定などがその効果を高めるために求められる。これにより「街道観光」による交流人口の増加が実現し、地域社会の活性化ないしは地域文化の創生、発展にもつながり、観光効果の幅を拡げることができる。また、「街道」は地域と地域を結び付けるものであるから、「街道観光」によって観光地間がつながり、観光ネットワークが構築され、観光による幅広い地域づくりも実現することになる。
このように「街道観光」は新しいまちづくりにつながる観光として発展する必要があるが、そのための留意点として、次の諸点が考えられる。
まず、地域と「街道」のブランド化によって「街道観光」の特色を明確に打ち出すことである。次に沿道のまちに集積する機能の立地などをより効率的、魅力的なものとする努力、伝統的なまちなみの保全と活用への努力が住民の協力のもとに求められよう。そして、街道を介して他のまちとの役割分担を適正化するなど、広域的、効率的な国土づくりが「街道観光」の受け入れ、発展のために必要である。
また「街道観光」の安全確保について、歩車道の分離、歩行者専用道整備は急を要する。とくに最近、自転車の増加に伴い、自転車と歩行者の分離が緊急課題となってきた。観光地や大都市では早急に自転車道の整備が必要である。
「街道観光」は歩く交通行動が中心であるだけに、このような歩行者の安全確保が大前提であることはいうまでもない。
日本商工会議所 観光専門委員会 委員