子供にやさしい宿へ――次世代を育てる責務(6/1付)
電力不足のまま迎える今夏は、「平年よりもやや暑め」と気象庁は発表した。昨夏の悪夢のような暑さが甦る。このようななか、自動車産業などは、業界を挙げて土・日に工場を稼働させ、木・金を休日にするという、電力消費の平準化に向けて英断を下された。
観光業界は、省エネに何ができるか? それは、多くの電力消費が予想される一般家庭から、一家族でも多く、観光客を旅館に集めることである。
夏休み期間中に、家族が長期間滞在できるプログラムを旅館は提供できないものか。宿泊費と食事代を分離して、食事代はオプションとする。さらに、可能であるなら、大人料金は高めであっても、子供料金を格安にする。旅館の場合、一家族何人であろうと1部屋なので、宿としては融通しやすいはずだ。
昨今、旅館に泊まった経験のない学生や子供が増えていると聞く。子供時代に旅館に泊まった経験のない人が、大人になって突然変異のごとく、旅館を頻繁に利用するだろうか。その可能性は相当に低い。子供のころから旅館というものに慣れ親しんでいないと、敷居は高く感じるものなのだ。
プロ野球やJリーグでも、子供たちが球場に来やすいように、ファン感謝デーなどを積極的に行い、子供たちとの触れ合いを何よりも大切にしている。 また、フランスでは美術館などに子供は無料で入館させ、文化・芸術との触れ合いを重んじている。自分たちの生業を大切に思うのであれば、目先の利益を追うのではなく、長期的なビジョンを持って次世代の子供たちに接近しなければならない。
では、旅館業はきっちりと子供たちに目を向けているだろうか。おそらく、小金を持つ高齢者ばかりに目が向いているのではないだろうか。しかし、頼りの高齢者層すらも数年後には、人口減少時代を迎えるのだ。
大人からお金を取り、子供からお金を取らない。これは商売の基本であり、鉄則である。
子供時代は何をしても楽しいのである。その楽しい盛りの子供たちを、遊園地や携帯電話、ゲームなどに取られてもいいのだろうか。なぜ、無償でも旅館の楽しさ、素晴らしさを知ってもらおうとしないのか。観光庁も本気で観光振興をしたいのなら、子供の宿泊費用の一部負担など真剣に取り組むべきである。
(編集長・増田 剛)