2011年注目すべき温泉地 ― 胸打つ選者のプロ意識(8/1付)
今号の特集では、温泉を愛して止まない専門家17人に「2011年注目すべき温泉地」を選んでいただいた。旅行作家や旅行ジャーナリスト、トラベルキャスター、観光を専門とする大学教授などにアンケートを送付しそれぞれ独自の視点から、今年最も注目すべき3つの温泉地を選出してもらう企画だ。 顔ぶれを見てもらうとおわかりだろうが、錚々たるメンバーにご協力をいただいた。“第一級”の17人の専門家から名前が挙がった温泉地は、その重みを実感されるかもしれない。
この企画を進める最中に、東日本大震災が発生した。当初3月15日をアンケート締切日に設定していたため、回答を見合わせた専門家の方々もおられた。企画を一時中断せざるを得ず、発表も見合わせていた。
震災後2、3日の有様を今思い出すと、企画発案者の本人すら「この状況ではアンケート回収は無理かな……」と半ば諦めかけていた。そのような状況のなかで、数人の専門家は震災直後であったにも関わらず、アンケートを返信してくれた。僕は、彼(彼女)らの観光に対する「プロ意識」の高さに感動してしまった。未曾有の天変地異の最中にあっても、自分の天職を全うする姿勢に胸を打たれた。そのような覚悟も、この企画には込められているのだ。
今号の5面で、JR東海相談役の須田寛氏は強い信念を持って語っている。「観光は人間の本能に根ざす文化活動。重要な経済行為であり、地域活性化の大部分は観光が担っている。観光がなくなれば経済活動が委縮し、文化の発展も止まってしまう。観光は災害があっても推進すべきだ」と。「観光は遊びではない。今回の震災で、日本では有識者といわれる方々の多くも、観光を遊びと捉えていることを知り、残念だった」と悔しそうに話す姿が印象的だった。観光業界は、自分たちが社会に貢献していることの大きさに気づくべきであるし、もっと、もっと胸を張っていくべきなのだ。誇りを忘れてはいけない。
話を戻そう。今回名前の挙がった温泉地を見ると、北から南まで日本全国ほぼ隈なく網羅されているから不思議だ。さすが全国の温泉地を巡り歩いている方々だと改めて感心してしまう。そして、推薦理由に何と愛情がこもっていることか。好評を得れば、ぜひ12年もやってみたい。
(編集長・増田 剛)